BEAUTY 2020.08.28

夏の紫外線に要注意!ヘアケアメーカー・ukaの施術者が教える、美髪を作るための「温度ケア」

Hair care 150℃

夏の強い日差しは肌トラブルの元。UVカットや保湿剤など、スキンケアに目が行きがちです。でも、ダメージを受けているのは肌だけではありません。 身体の中でも太陽に最も近い位置にある「毛髪」は、太陽光の影響をとても受けやすいといわれています。もし何も対策せずにこの夏を過ごしていたとしたら、あなたの髪はすでに肌以上に「日焼け」して、ダメージが加速してしまっているかも……。そんなときは、髪の毛と「温度」の深〜い関係を知って、ツヤサラ髪を取り戻しましょう! 今回は、ヘアケア用品をはじめとするサロン発のホームケアプロダクトブランド「uka(ウカ)」が運営するビューティーサロンを訪問。ヘアケアのスペシャリストである「ヘッドスパスペシャリスト」の大友麻莉子(おおとも まりこ)さんに、髪や頭皮がダメージを受けるメカニズムと、温度を活用した効果的なケアの方法について聞きました。

Writer:小村トリコ/Photographer:枝松則之

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大友麻莉子(おおとも まりこ)

ヘッドスパ・スペシャリスト。ヘアやネイル、ヘッドスパ、アイラッシュなどの理美容サービスを総合的に提供するサロン「uka 東京ミッドタウン 六本木」にて、ヘッドスパや頭皮診断、頭皮クレンジングなど、頭皮と頭髪の健康のための施術を担当。大友さんのヘッドスパを目当てに来店するお客様も多いのだそう。

油断はダメ!紫外線がもたらす髪へのダメージ

そもそも、夏の日差しはなぜ髪に悪いのでしょうか。

大友麻莉子(以下大友):

一番の要因は「紫外線(UltraViolet)」です。これは地球に到達する太陽光線のなかで、波長が短くエネルギーの高い光を指します。このうち地表まで届くのは、UV-A(紫外線A波)とUV-B(紫外線B波)の2種類。

まず、紫外線のおよそ9割を占める「A波」は、1年を通して降り注いでいます。「透過性が高い」という特徴を持つため、くもりの日でもほぼ変わらずに大気を通り抜けます。たとえ室内にいても、窓ガラスを通してA波を浴びることに。これが髪にあたると、髪の表面だけでなく深部にまで入り込んで、ダメージを与えます。

この場合の「ダメージ」とは、髪の主成分である「ケラチンタンパク」の結合が切れた状態のこと。もともと手を結ぶようにがっちりとつながっていたタンパク質の結合が、A波を浴び続けることで切れる。すると髪は本来の柔軟性やしなやかさを失うのです。これが紫外線による「酸化変性」です。

日照時間の長い夏のあいだは、そのぶんA波を浴びる時間も長い。だからダメージはより大きくなります。

では、もうひとつの「紫外線B波」は?

大友:「B波」は太陽との距離が近づく時期、つまり春過ぎから夏にかけて急激に増える紫外線です。A波より総量は少ないものの、はるかに強力で厄介です。「サンバーン」と呼ばれる、火傷のように真っ赤な炎症と痛みを引き起こすのがB波です。

毛髪がこのB波を浴びると、髪の表面をおおうバリア機能である「キューティクル」は傷ついてぼろぼろに。キューティクルが守っていたタンパク質や水分などの内部成分が外に流れ出して、髪の中身は空洞化していきます。

以上がいわゆる「髪の日焼け」という状態です。A波とB波の2つの紫外線によって、髪の内側と外側がダブルで攻撃を受けている。その結果、乾燥やごわつき、縮れ毛、抜け毛、褪色(たいしょく)などあらゆる髪トラブルの原因になるという、極めて深刻なダメージを毛髪に与えるんです。

しかも同時に、頭皮も「日焼け」しているのですよね。

大友:たとえば髪の分け目をいつも同じにしている方だと、その部分だけ頭皮の色が濃くなっていることがあります。これは地肌が日焼けをしているからです。

頭皮の日焼けの何が悪いかというと、日焼けによって肌が著しく「乾燥」すること。ヘアローションや美容液などの「保湿剤」でその都度、適切なケアができていれば大きな問題はありません。しかし、もし日焼け後に放置してしまった場合、うるおいを失った肌からはいつしか「キメ」がなくなってしまうんです。

頭皮の「キメ」とはどういうことでしょう?

大友:「キメ」は、肌表面に刻み込まれた小さな凸凹です。一般的にはお顔の皮膚を指しますが、頭皮だって同じこと。キメが細かく均一に整った肌は、ツヤやハリがあってなめらか。いわゆる「美肌」の条件とされていますね。反対にキメのない肌は、弾力がなく、まるでビニールのようにつっぱった感じに。

頭皮の状態が悪くなると、髪に何が起こるのですか。

大友:頭皮とはいわば、毛髪をつくるための「土台」のようなもの。髪を支え、栄養を届けて健康な髪を育てるのが主な役目です。だから頭皮のコンディションは、今ある髪やこれから生えてくる髪の良し悪しにそのまま反映されます。キメのないビニール肌の頭皮では、髪はやせてボリュームダウンしてしまうでしょう。

頭皮のケアは、髪自体のケアと同じくらい大切。特に夏場は外に出れば紫外線、室内では冷房と、頭皮にとっては水分を奪われる機会の多い過酷な環境です。だからこそ、夏は日々のお手入れが肝心なんですよ。

髪と頭皮を守る&直すケアで、夏髪を健康に

uka商品の画像

紫外線対策として、具体的には何をすればいいでしょうか。

大友:まずは「紫外線ブロック」から始めましょう。肌の日焼け対策と同様、「帽子」や「日傘」は紫外線を防ぐのに有効なアイテムです。外出の際には必ずどちらか、あるいは両方とも使っていただきたいですね。

ポイントとして、帽子はなるべく「通気性のよいもの」を選んでください。暑い夏はとにかくたくさん汗をかきます。帽子の内側が湿って蒸れた状態になると、頭皮のコンディションが悪くなり逆効果になってしまうことも。カラーはできれば、紫外線透過率の最も低い「黒」が望ましいです。

また、一般的な肌用の日焼け止めは頭皮や頭髪に使うことはできませんが、紫外線対策のためにつくられた髪専用のオイルミストなどの製品があります。これは出かける前に髪にさっとスプレーすることで、紫外線による髪へのダメージを防いだり、すでに受けたダメージを補修したりといった効果があります。

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夏になると、メントールが入ったクール系のシャンプーをよく見かけます。洗うとひんやりして気持ちいいですが、ヘアケアという面ではどんな意味がありますか。

大友:こうしたアイテムは「すっきりした使い心地」に重点が置かれていると私は感じます。

たとえば、お風呂上がりにメントールの爽快感があると、その後ドライヤーをかけているときに「汗をかきにくい」という利点があります。なぜこれが利点かというと、夏場はドライヤーの熱風で乾かしながらも汗をかいてしまい、髪が半乾きになりやすいからです。半乾きのまま放置すると、髪や寝具に雑菌が繁殖してニオイの元になったりなど、思わぬトラブルを起こします。

「涼しさ」をヘアケアに利用するわけですね。他にも、熱で火照った頭皮をクールダウンさせる効果もありそうですが……?

大友:シャンプーはあくまで「髪の汚れを落とす」ことが目的です。頭皮に浸透することはなく、肌に直接働きかけて何かを変える力はありません。

では肌を鎮静させるのは何かというと、洗髪後につけるヘア美容液などです。フェイスケアでいうところの、「洗顔フォーム」と「化粧水」のような関係ですね。このようにヘアケア用品にはそれぞれ役割があるので、それらの仕組みを理解することが大切です。

毛穴汚れを根こそぎ落とす「頭皮クレンジング」

正しいヘアケアについて、もっと教えてください! 毎日のお手入れではどんなことをすればいいですか。

大友:では、ご家庭でできるヘアケアの方法をお伝えしますね。私たち「uka」のヘッドスパで大人気のメニューで、日々のケアにもぜひ取り入れていただきたいのが「頭皮クレンジング」です。

頭皮クレンジングとは、シャンプーの前に頭皮を洗うこと。普段のシャンプーだけでは落としきれない頭皮の汚れや毛穴に詰まった皮脂などを、奥からすっきり取り除きます。ukaでは週に1〜2回程度の頭皮クレンジングをご提案しているんです。では、さっそくやっていきましょう!

ukaヘッドスパスペシャリスト大友麻莉子さんから施術中の画像

大友:初めに「予洗い(よあらい)」です。洗髪前の乾いた状態で、頭皮を丁寧にブラッシングします。髪の毛についたホコリや花粉など、これだけで髪の汚れの6〜7割が落ちるといわれています。

また、髪のからまりを事前にとってあげることで、シャンプーの泡立ちをよくする効果も。頭皮をマッサージする感覚で、軽く叩くようにして使うのも気持ちいいです。ブラシは目が荒く、根元がクッションになっているタイプを選んでください。

次に、シャワーのお湯を地肌に直接あてて流していきます。前頭部だけでなく後頭部も髪をかき分けて、しっかりとシャワーで洗い流してください。

私の場合、後頭部だけで最低30秒はかけるようにしています。すでに汚れの8〜9割は落ちているはず。コツをつかめば、ご自宅でも美容室で受けるシャンプー並みのすっきり感が得られますよ。

予洗いが済んだら、いよいよ「頭皮クレンジング」です。頭部を5つのラインに分けて、頭頂部(1本)・目の上(2本)・こめかみ(2本)と、線を引くように頭皮用のクレンジング剤をつけます。髪をかき分けながら、地肌に少しずつ。続いて後頭部にもつけていきます。

洗うときは、指の腹の部分を使ってください。地肌に一度手を沿わせて、そこから離さないように動かしていくイメージ。爪を立てるのは絶対にNGです。地肌が傷つき、そこから雑菌が入ってしまう危険があります。

手の代わりにシリコン製の「スカルプブラシ」というアイテムを使えば、肌を傷つける心配もなく、指よりも細やかに洗うことができます。さらには頭皮のマッサージにもなって、いいことずくめです。

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ukaヘッドスパ中の画

大友:普段なかなか意識する機会はないかもしれませんが、実は頭皮には「日々のつかれ」がたっぷりと溜まっています。

紫外線のストレスはもちろんのこと、歯ぎしりや食いしばりといった日常の癖、パソコンやスマホで長とき間にわたって目を酷使する作業などを繰り返すことで、「頭皮の凝り」が蓄積されます。ひどくなると頭皮がカチコチになって、頭痛や肩こりなどを感じるように。

そこで有効なのが「頭皮マッサージ」です。本格的なマッサージを自分でするのは難しいものの、毎日の気軽なストレッチとして、シャンプーまたは頭皮クレンジングのときにこのスカルプブラシを使ってください。凝り固まった頭皮がほぐれ、血行が良くなっていきます。

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大友:頭皮クレンジングの後はシャンプーで髪を洗い、トリートメントで髪を保護して、洗髪は完了です。

ちなみに、「朝シャン」と「夜シャン」という言葉がありますが、シャンプーはできれば「夜」にするのがオススメ。理由としては、成長ホルモンの分泌が盛んになる夜の時間を清潔な状態で過ごせること。もうひとつは、夜寝ているあいだに皮脂と水分が混ざり合い、朝にはバリア機能を持つ膜となって、理想的な頭皮状態で1日の始まりを迎えられるからです。

お仕事の都合などでどうしても朝シャンになってしまう方は、もともとあったバリア機能を落としきらないように、洗浄力が弱めのシャンプーを使っていただくのがいいですね。

なんだか顔まわりがすっきりして、すごく軽くなった気がします!

大友:頭皮クレンジングの施術を終えたお客様からは「目がぱっちり開くようになった!」と驚きのお声をいただくこともあります。

頭皮の筋肉はお顔と直接つながっているので、リフトアップの効果を感じる方もいらっしゃいます。同様に、首や肩の軽さを実感される方も。頭皮をほぐすことで、人それぞれに良い効果があるようです。

「温」と「冷」を使い分けて、ワンランク上のヘアケアを

大友:さあ、乾かしていきましょう。美容液のオイルを髪になじませてからドライヤーをかけます。キューティクルは「濡れると開き、乾くと閉じる」という性質があるため、髪が濡れているうちに美容成分を内部に浸透させるのがセオリーです。

ドライヤーをかける上での注意点は「オーバードライ」、つまり熱をあてすぎる状態にしないこと。

ここでも「温度」が肝ですね。オーバードライはなぜよくないのでしょうか。

大友:理由はふたつあって、ひとつは頭皮や髪が「乾燥」してしまうから。熱が乾燥を引き起こすのは、日焼けのときと同じです。

もうひとつは、ドライヤーによる「熱変性」から髪を守るためです。髪の内部成分であるタンパク質は、高温にさらされることによってダメージを受けることがあります。焼けた髪がチリチリになる、あの感じですね。こうなってしまうと元には戻りません。

熱変性は、濡れてキューティクルが開いた状態では約60℃から始まります。ドライヤーで髪を乾かすときは、髪をそれ以上熱くしないようにしてください。

髪の温度は測れませんが、どうやって気をつければいいですか。

大友:髪を触ってなんとなく「熱いな」と思ったら、温度が上がりすぎのサイン。そんなときはすぐに「冷風」にしましょう。ドライヤーによっては自動的に冷風に切り替わるものもありますが、そうでなければ手動でシフトして、温風と交互に使いながら乾かしていくのがベストです。

また、途中で冷風をはさむことで、「まだ乾いていない部分」がひんやり冷たくなってわかるというメリットもあります。最後はそこだけ集中して乾かすようにすれば、オーバードライと生乾きの両方を防ぐことができますよ。

コテやヘアアイロンを使うときも同じで、最も低めの150〜160℃程度の設定が安心です。なるべく長時間あてないようにしましょう。

そのケア、間違ってない? 自分を知ることが美髪への近道

今回は夏のヘアケアを中心に伺いましたが、季節によってケアの方法は変わりますか。

大友:これからの「秋」は、春から夏にかけて強い紫外線を浴びてきた髪がリセットされる時期。つまり、ダメージヘアが「抜け毛」となっていくんです。

だから1年のなかで、最も抜け毛が多いのが秋。それを気にされる方は多いです。でも抜けてしまったものは仕方がないので、その後にしっかり頭皮ケアをしてあげることで、次に生えてくる毛髪の質が決まります。いうなれば秋は「土台づくり」の季節です。ヘアケア用品は、育毛成分が入っているものを中心に選ばれるといいですね。

対して、冬は乾燥や、衣服との摩擦による刺激が気になる季節。静電気で髪がダメージを受けることも多いので、いつもよりしっとりめのアイテムを選んで、保湿を心がけてください。

自分に合ったヘアケアがわからないときはどうしたらいいでしょうか。

大友:大切なのは、今の自分の状態を知ること。たとえば、「私はオイリー肌だ」と思っている方はとても多いですが、実際に頭皮を見せていただくとほとんどは「乾燥肌」だったりします。乾燥が原因で夕方から過剰な油分が出ているだけなのに、それをオイリーと勘違いして洗浄力の高いシャンプーを選んでしまうと、間違ったヘアケアに走ることになります。

なるほど。ヘアケアは奥が深いですね……。

大友:難しいことは何もありません。気になる方はぜひ、ヘアケアを得意とするサロンに足を運ばれてみてください。お店を探す際は「頭皮カメラ」や「専属スタッフ」の有無が指標になるかと思います。

自分の頭皮と向き合うこと。そして「温度」を上手に味方につけること。そうすることで、正しいヘアケアが見えてきますよ。

まとめ

「健康な頭皮が美髪をつくる」と話す大友さん。そのためには、自分の頭皮の状態を把握することが不可欠だと言います。そこで今回大友さんに教わった、「頭皮の凝り具合」をセルフチェックできる方法をお伝えします。

やり方はとてもシンプルです。自分の「頭頂部」と「耳のすぐ上の部分」の頭皮を、それぞれつまんでください。

2カ所のつまんだ感覚が、だいたい同じくらいならばOK。でもたとえば「頭頂部がうまくつまめないのに、耳の上はつまめる」としたら、頭頂部が凝って固くなっている可能性が高いとのこと。ぶよぶよになっているときは、むくんでいる場合もあるのだとか。この方法はサロンでも使われているそうなので、試してみてくださいね。

INFORMATION

uka 東京ミッドタウン 六本木

東京都港区赤坂 9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア 2F ビューティー&ヘルスケアフロア
tel:03-5413-7236
公式サイト:https://www.uka.co.jp/

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マガジンど 編集部

あらゆるものの温度について探究していく編集部。温度に対する熱意とともに、あったかいものからつめた〜いものまで、さまざまなものの温度に関する情報を皆さんへお届けします。

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