HEALTH 2020.08.26

私たちのエアコンに対する誤解とは?熱帯夜でもひんや〜り過ごす方法をエアコンメーカーに直撃

Air conditioner 28℃

夏本番に突入し、寝苦しい夜が続いていますよね。ぐっすり眠れず、日々の疲れが取れないとお悩みの方も多いのではないでしょうか? でも、エアコンをつけっぱなしで寝ると体に悪そうだし、電気代も気になる……。さらに今年は、新型コロナウイルス対策として換気の必要性も叫ばれていて、熱中症対策と換気とを同時に気をつけなければいけないという過酷な状況です。 そこで、エアコンを賢く使って効果的にお部屋をひんやりさせる方法を、エアコンの老舗メーカー、富士通ゼネラルに取材に行ってきました。お話を伺ったのは「皆さんのエアコンに対する誤解を解きたいんです」とおっしゃる商品企画部の平さん。私たちのエアコンに対する誤解とは……?

Writer:末光京子/Photographer:橋本千尋

今日お話を伺ったのは……

株式会社富士通ゼネラル 空調機事業総括本部空調機商品企画部主席部長
平 律志さん

1991年入社。入社以来、一貫して国内向け家庭用エアコンの開発に携わり、2013年発売の初代「ノクリアX」の開発を手がける。現在は、エアコンの商品企画を担当。中長期的な視点から商品のコンセプトやランナップなどを企画している。

エアコンの設定温度ってどうやって決めればいいの?

ズバリ、エアコンの設定温度はどうやって決めたらいいのでしょうか? 環境省が推奨していた「冷房時の室温28℃」には根拠がなかった、なんていう話もありました。

平 律志(以下平):


それは28℃が間違いという訳ではなくて、やっぱり人や使用環境によって違うということなんですよね。私がいつも申し上げているのは、「快適な設定温度=自分が快適だと思う温度」なんです。ちょっと答えになってないようなんですけど(笑)。

まるで禅問答のような……。

平:28℃だ、27℃だと数字で決めるのではなくて、自分が快適だと思える温度を見つけて欲しいということなんですよね。快適な温度って人によっても、部屋の広さなどによっても違うので、もともと一概に言える話じゃないんです。それに、エアコンは室温を検知して設定温度を制御しているんですけど、環境によってはどうしても室温と設定温度が一致しない場合もあって。だから、あくまでも“相対的な指標”として設定温度を使って欲しいんです。

例えば、ある人にとっては、西日が差し込むときなどは設定温度を下げないと快適にならないっていうこともあるんです。だから我慢しないで、暑いと思ったら設定温度を変えて、快適な温度を見つけていただきたいです。

日本はジメジメしていて、気温がそんなに高くなくても不快に感じる場合がありますよね。快適だと感じる「温度」と「湿度」の関係ってあるんでしょうか。

平:好みもありますが、一般的に温度は27〜28℃くらいで、湿度は50%くらいが概ね快適だと言われています。日本の気候ですと、夏場は湿度50%の日ってほとんどなくて、すぐそれ以上になってしまうんです。60〜70%になると不快な状態と言われているので、湿度を50%にできれば全然違います。

では、エアコンを使うときには「冷房」と「除湿」を組み合わせて使うのがいいということなんですね。

平:いいえ、そこが我々の反省のいるところでして。昔からエアコンには「冷房」と「除湿」っていう機能が当たり前のようにあるんですが、使う人からしたら、どう使い分けたらいいのか、わかりにくいですよね。個人的には、「冷房」ボタンを押すだけで勝手に27℃・50%を目指すべきだと思っていて。それに実は「冷房」だけでも湿度を下げられることできるんです。「冷房」というのは熱交換器を冷やして冷風を出すんですが、冷やすとそこに結露が発生するので、部屋の湿度をとっていることになるんです。だから、本当は「冷房」を使ってもらうだけでいいんです。

ん? じゃあ、「除湿」って一体…?

平:本来、「除湿」機能って除湿機と同じだと思ってもらったほうがいいと思うんですよね。除湿機って温度を上げたり下げたりできないですけど、湿度はとりますよね。そういう機能がエアコンにもついてます、と。でも、ここがわかりにくくなる原因だったんですが、弊社含め、メーカーによっては「除湿」モードでも温度設定ができるようにしていたんです。極端にいうと、「除湿」は“ソフト冷房”とも言えるような働きをしていて、作っているこちらもどう使い分けてもらったらいいのかわからない状態になってしまっていて……。

だから弊社では、数年前から除湿は除湿機の代わりとして位置付けて、温度を設定したい場合は「冷房」だけを使っていただく方向にシフトチェンジしていってるんです。

ノクリアXのリモコンはAmazon Alexaにも対応。デザインもおしゃれ

では、効果的にエアコンを使うにはどうしたらいいのでしょうか? サーキュレーターを併用するといい、とはよく耳にしますが。

平:先ほどから「温度」「湿度」が話に出てきていますけど、それに「気流」を加えて、この3つが「空調の3要素」と言われているんです。体感的にもわかりやすいと思うんですけど、温度が高ければ暑いですよね、低ければ涼しい。そして、同じ温度でも湿度が高ければ暑く感じる、低いと涼しく感じる。気流も同じなんです。気流があると涼しく感じますけど、無風だと暑く感じますよね。

確かに。

平:ちょっと話は変わりますが、初代「ノクリアX」(2013年発売)の開発中に「もっと快適性を上げられないか」と会議をしていたんですが、行き詰まってしまったことがあったんです。気分転換に公園に行って木陰で休んでいたら、風がフワッと吹いてきて。「これ、心地いいよね? なんでだろう?」という話になって、心地よさの原因は自然な気流だということに気がついたんです。考えてみれば、当たり前なんですけど(笑)。

エアコンが嫌いという人は、風が不自然だから嫌だって言いますよね。なぜそう感じるかといえば、エアコンの風は12℃とか15℃とか冷たい風なんです。それは自然界ではあり得ないことで。気温27℃だったら27℃の風が吹いてくる。もちろん冷たい風を出さないと室温を下げられませんから、冷たい風は必要なんです。でも、それだけじゃなくて、室温の風を吹けるようにして、公園で感じた心地よさを部屋の中でも再現できるようにしようと思ったんです。

現在富士通ゼネラルからはノクリアX、Z、SV、D、Cなどのシリーズが展開されている

初代「ノクリアX」は「気流」にこだわった初めてのエアコンだったんですね。

平:気流があるかないかは大違いで。そういう意味で、サーキュレーターの併用っていうのはすごく効果があると思います。ただ、サーキュレーターは人に直接当てるには風が強すぎるので、それはおすすめしません。サーキュレーターをつけて部屋全体の空気をゆっくり動かすくらいがちょうどいいと思っています。風速でいうと、毎秒0.5mって言われているんですけど。大体ゆっくり歩いているくらいの速度です。風と感じないけど、言われてみれば、時々風がくる、くらいな。

そんな気づかない程度の風でいいんですか!?

平:夏に外を歩いてると、暑いですよね。でも信号待ちで止まるともっと暑く感じて急にモワッと汗が出ませんか? あれは、実は自分が歩いているだけで風が起きているから、少しは暑さが抑えられていたっていうことなんです。止まると無風になるから、急に暑さを感じる。それくらい毎秒0.5mの気流があるかないかっていうのは体感として違うんです。

サーキュレーターを使うときのポイントを教えてください。

平:エアコンも風を出しているので、気流を起こしているんですが、エアコンの位置は動かせませんから、エアコンから一番遠い、エアコンの気流が一番作用しにくいポイントに置くのがいいと思います。下に向けるより、上に向けたほうが作用する空気が大きくなるので、人に当たらないようにしながら斜め上に向けるのが一番いいんじゃないでしょうか。

また、サーキュレーターやエアコンでも、スイング動作をさせて撹拌するイメージを持っていらっしゃる方が多いと思います。しかし、部屋全体の空気を動かそうとする場合は、スイング動作はおすすめしません。スイングさせると近い距離の部分的な空気しか動かないのですが、固定して同じ方向に吹き続けることによって、次第に部屋全体の空気が動くようになるからです。これも誤解されていることだと思います。

しかし、今年は新型コロナウイルスの影響もあって換気も求められています。エアコンをつけながら換気する場合、気を付けるべきことってありますか?

平:一般的に訴えているのは、定期的に窓を開けて換気してくださいっていうことです。短時間でかなりの量の部屋の空気が入れ替えられますので。そのとき、エアコンはつけっぱなしでお願いします! 逆にスイッチを消すほうが効率悪くなってしまうので。そこも誤解されている方がまだまだいらっしゃって。部屋が涼しくなると、エアコンを止めちゃう方もいらっしゃるんですよね。涼しくなったら止めて、暑いと感じたらまた入れる、みたいな。それはおすすめしません! エアコンをつけっぱなしにして、暑い寒いと感じたら設定温度を変える。そのほうが効率はいいんです。

でも、つけっぱなしにするとどうしても電気代が心配で…。

平:室外機が動いて空気を冷やすんですけど、つけっぱなしと言っても、実は室外機が止まっていることも多いんです。設定温度に到達したら、エアコンは運転していても監視している状態なので、電気代はほとんどかかっていない。だから、そんなに電気代は気にしないで、つけっぱなしのほうが効率いいんです。お出かけのときも30分くらいだったらスイッチを切らないほうがいいですよ。

平さんのおすすめはもちろん「ノクリアX」。素敵な笑顔でご紹介くださいました

なるほど! これからは思う存分つけっぱなします! 寝苦しい日も続きますが、快適な睡眠を手に入れるためにおすすめのエアコンの使い方ってあるんでしょうか。

平:個人的には、これもつけっぱなしをおすすめしています。先ほども言ったように、そんなに電気代をかけて冷やしているわけじゃなくて、特に夜は室外機が止まっていることのほうが多いんです。それよりも、暑くて目が覚めちゃうとか、極端な例だと熱中症の危険もありますので、快適に眠れるようにつけっぱなしにしたほうがいいと思いますね。そこで注意しなければいけないのは、設定温度の下げ過ぎです。寝ると代謝が落ちるので、寝るときに涼しいと感じているようだと寝ている間は寒くなってしまいますから、寝る前はちょっと物足りないくらいの設定温度がちょうどいいと思います。一晩28℃で寝てみて、暑いようならもう少し下げるっていうふうに、寝具と合わせてここでも一番快適に眠れる温度を探してください。

ダブルAIで快適をオーダーメイド⁉︎ エアコンの最新機能とは?

では、次にエアコンの最新機能について教えてください。「ノクリアX」の「ダブルAI」ってどんな機能なんですか?

平:ダブルというのはエッジAIとクラウドAIのことで、エッジAIというのはエアコン1台1台のことを指します。各家庭のエアコンがクラウドと連携することによって、その家庭の傾向を学習・分析して、次はこうしたらいいんじゃないかというのを高精度で提案していく機能です。エッジだけ、クラウドだけというメーカーは多いんですけど、両方使うのは弊社が業界初で。現在はセンサーが発達しているので、ついセンシングに走りがちなんですけど、結局、今そこにいる人が体感としてどう感じているのかっていうのは、その人に聞いてみないとわからないですよね? でも、その人が設定温度を上げたとしたら、寒いと感じたから上げた訳で。

体感温度予測」というんですが、設定温度を変える操作があったときに、そのときの室温や時間帯など環境を記憶して、使う人の傾向を見つけようとするんです。その人の傾向がわかったら、それを自動的に先回りして行うようになるっていう。

ノクリアのすべての最新機能が詰め込まれたノクリアX。意外にもコンパクト

エアコンがカビ菌や細菌を除去してくれる機能もあると伺いました。

平:熱交換器加熱除菌」のことですね。エアコンの中には熱交換器というアルミのフィンのようなものがあって、それを冷やすことで冷房するんですけど、冷やすと結露が発生します。カビ菌や細菌は55℃で10分キープすると99.9%以上が死滅すると言われているんですが、この結露で発生した水を55℃に加熱することによってカビ菌や細菌を除去するんです。ポイントはただ熱くするのではなく、水を加熱するということ。例えば、90℃のサウナは入れますけど、55℃の湯船には熱くて入れないですよね? それは液体のほうが熱を伝えやすいからなんです。それはカビ菌や細菌にとっても同じなんですよ。

「再熱除湿」というのは?

平:先ほど「除湿」は除湿機の代わりと思ってくださいとお話しましたが、「再熱除湿」はまさに室温を下げずに除湿だけする機能です。これは昔からある機能なんですが、以前は梅雨時のジメジメ対策以外にはあまり活用されていなかったんです。でも、実は夏の間ずっと活躍してくれる機能で。「ノクリアSV」では「さらさら冷房」と言っているんですが、普通の冷房を使っていて設定温度付近に到達すると、「再熱除湿」で室温は一定のまま湿度だけを下げていく運転に切り替えてくれるんです。だから、寒くなりすぎるということもなく、つけっぱなしで寝るときにもおすすめなんです。

ノクリアSVは再熱除湿機能付き。インテリアにもこだわり、外面が布地のような質感

そのほかにおすすめの機能はありますか?

平:4〜5月とか、エアコンを使うほどじゃないけど、暑いなと感じる日ってあると思うんですけど、そういうときにおすすめしているのが送風機能。気流があるだけで涼しくなると言いましたが、送風だと電気代が冷房よりもかからないので、まだエアコンを使うには早いかなと思うような暑くないときはぜひ送風を使ってもらいたいんです。

「ノクリア(nocria)」という商品名は「aircon」を逆に表記することで、エアコンの常識をひっくり返すという意味が込められているのだそう

こんなにたくさん機能がある中で、エアコンを買い換えるときはどこを重視すればいいんでしょうか? 見た目にそれほど違いもないし、選び方がわからないという人は多いと思うんです。

平:悩ましいですよね(笑)。大まかに言うと、各社ともに省エネ、清潔、快適っていう3つの柱があると思うんですけど、それがどれも同列に扱われているような気がするんです。でも私は、エアコンは快適にするための機器なんだから、快適性が一番大事なんじゃないか? ってずっと思っていて。極端なことを言うと、電気代は安いけど全然快適にならないとか、掃除は楽だけど快適にならないエアコンがあったら、それは本末転倒ですよね。だから、やっぱり一番に快適性を重視して欲しいんです。快適性を高めるためには先ほども言った通り、「温度」「湿度」「気流」の3要素が重要で。それに一番注力しているのは「ノクリアX」です! って言いたいんですけど(笑)。ご予算と相談しつつ、とにかく快適性を最優先で選んでいただきたいなと思います。

首に巻くエアコンって何!? “コモドギア”の正体とは?

通常のエアコンとは別に、富士通ゼネラルが新たに発表したウエアラブルエアコン「コモドギア」が話題を集めています。ここからは、広報IR室神田英之さんにお話を伺います。

富士通ゼネラルで最近話題の商品といえば、身に着けるエアコン「コモドギア」です。どういう商品なのか教えていただけますか?

神田 英之(以下神田)

コモドギアは首に装着した冷却部から頸動脈を流れる血液を冷却することで、深部体温を下げる装置です。近年、夏の屋外作業での熱中症が増えているという社会課題に対して、高気温の環境下での冷却効果と作業性の両立を実現するために開発いたしました。首に冷却部と、腰にラジエーターとバッテリーを装着して、冷却水を循環させることで冷やすことができるので、装着した状態でも作業をしやすい上に、気温35℃を超える猛暑日にも高い冷却効果が持続するんです。

首に巻くウエアラブルエアコン「コモドギア」

身に付ける、と聞いて、単に首元から冷風が出るようなものを想像していたので、まったくエアコンとは異なる仕組みだったことに驚きました。

神田:コモドギアはエアコンとはまったく違う原理なんです。難しい話になってしまうのですが、一般的なエアコンは、「冷媒」というものをコンプレッサーで回して空気を冷やしたり温めたりするのですが、コモドギアは電圧をかけると熱い面と冷たい面ができるという性質を持つ「ペルチェ素子」という素材を使っているのがポイントです。

6月から法人向けリースを始めたそうですが、反響はいかがですか?

神田:想定を超える反響をいただいています(7月取材時)。一番お問い合わせを多くいただいているのはやはり建設業ですね。発表してすぐにリアクションがありました。「こういう製品を待っていた」というお声や「ぜひ使ってみたい」というお声をいただいて。改めて猛暑による熱中症問題の広がりを強く実感しています。

一般販売されるご予定はあるんですか?

神田:弊社としてはご期待いただいている現状を理解していますので、一刻も早く一般販売できるように使命感と責任を持って取り組んでいかないといけないと思っております。

まとめ

今回取材に伺った富士通ゼネラルは、もはや一般的となったフィルターの自動掃除機能を業界で初めて搭載するなど、革新的な技術力で知られるメーカー。AIが先回りして自分だけの快適な環境を作ってくれる機能や熱交換器を清潔に保ってくれる機能など、そんな富士通ゼネラルのエアコンの進化はまだまだ止まりません! それに、実はエアコンをつけっぱなしにしたほうが効率のいい場合があることや、「冷房」と「除湿」の使い方など、エアコンについて正しく知らなかったという人も多いのではないでしょうか。エアコンは高価なお買い物です。だからこそ、せっかくならエアコンの持つ機能を正しく知ってフル活用して、今年の猛暑を乗り切りたいですよね。設定温度という数字に縛られず、自分に合った温度を探究していくことが、快適なエアコンライフを手に入れるコツ。皆さんも賢くエアコンを使って、ご自身が一番快適に過ごせる設定温度を見つけてください!

INFORMATION

株式会社富士通ゼネラル

(本社)
神奈川県川崎市高津区末長3丁目3番17号
公式HP:https://www.fujitsu-general.com/jp/

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マガジンど 編集部

あらゆるものの温度について探究していく編集部。温度に対する熱意とともに、あったかいものからつめた〜いものまで、さまざまなものの温度に関する情報を皆さんへお届けします。

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