FOOD 2020.10.27

日本茶がもっとも美味しく飲める温度は?お茶の淹れ方を「伊藤園」のティーテイスターがレクチャー

Japanese Tea 50〜90℃

最近はもうすっかり秋を感じられる気候になってきました。そうなると恋しくなるのが温かいお茶。でも、一口にお茶といっても、日本茶だけでも煎茶やほうじ茶、抹茶などいろいろな種類があって、違いがよく分からないという人も多いのでは? そこでお茶といえばココ! 「お〜いお茶」などでお馴染みの伊藤園に取材に行ってきました。お話を聞いたのは、伊藤園広報部の堀井あずささん。「弊社はもともとお茶屋としてスタートして、今も茶畑からお茶を作っているんです。お茶のことならお任せください」と語る堀井さんに、お茶の基礎知識や美味しい淹れ方をお伺いしました。また、お茶の健康効果やオススメのアレンジメニューも教えていただきました。

Writer:末光京子/Photographer:枝松則之

今日お話を伺ったのは……

株式会社伊藤園 広報部 堀井 あずさ

2014年入社。知的財産部、官公庁出向を経て、2017年広報部に異動。主にメディア対応や社内報の制作を担当。2019年に厚生労働省認定の社内検定「伊藤園ティーテイスター2級」を取得し、社内外にお茶の文化や魅力を発信している。 

煎茶、玉露、抹茶、番茶、ほうじ茶の違いって?意外と知らない日本茶の基礎知識

まずは、日本茶の基礎から教えてください! 緑茶と紅茶と烏龍茶は同じ茶葉からできていると聞いたことがあるのですが、それは本当ですか?

堀井あずさ(以下堀井):

はい。実は緑茶、紅茶、烏龍茶はすべて同じ木の仲間からできているんです。では何が違うかというと、作り方が違っていて。お茶の葉は摘みとるとすぐに発酵が始まってしまうので、摘んだ茶葉をすぐに蒸したり炒ったり加熱することで発酵を完全に止めたものが緑茶です。「不発酵茶」とも呼ばれて、緑色の鮮やかな色合いが特徴です。烏龍茶は茶葉をある程度発酵させた「半発酵茶」で、紅茶は完全に発酵させた「発酵茶」。だから、すごく色も黒いですよね。

すると、緑茶にとって発酵は大敵なんですか?

堀井:茶葉を摘みとると、その段階から発酵が進みます。茶葉は繊細なので、発酵してしまうと、キレイな緑色が出なくなったり、香りが悪くなってしまうんです。だから、少しでも早く発酵を止めるため、茶畑のすぐそばに一時加工する工場を備え付けています。


そこで、水分を抜いて荒茶(あらちゃ)という長期保存に耐えられるよう加工するんですが、これは火入れという作業をしていないので、まだ形が不揃いで半製品の状態です。それを仕上げ加工する工場へ運んで、火入れをしてようやく完成です。荒茶にする前の蒸し時間や仕上げの火入れの度合いによって、お茶の味わいはすごく変わってくるんですよ。

緑茶と一口で言っても、煎茶、玉露、抹茶、番茶、ほうじ茶など、たくさんの種類があります。何が違うんでしょうか。

堀井:すごく簡単に説明すると、日本で最もよく飲まれている代表的な緑茶が「煎茶」です。太陽の光をいっぱいに浴びて育ったお茶で、程よい旨みと渋みが特徴です。お茶を摘み取る時期によって、4〜5月を一番茶、6月中旬〜下旬を二番茶、7〜8月を三番茶と呼ぶのですが、夏〜秋に摘みとられる比較的大きく硬めのお茶が「番茶」。

そして、煎茶や番茶をきつね色になるまで強火で炒ったものを「ほうじ茶」と呼びます。渋みが出にくく、香ばしい香りが特徴ですね。それから、高級茶として知られているのが「玉露」。玉露は「被覆栽培」といって、一番茶の新芽が2、3枚開き始めた頃に覆いをして20日間くらい日光を遮って育てるんです。そうすることで、渋みが少なく甘みの強いお茶になります。「被覆栽培」には他に「かぶせ茶」というのもあって、収穫前の7日間ほど覆いをして日光を遮って育てます。渋みが少なく旨味が多くなるのですが、玉露ほど手間がかからないのでお値段も抑えられるんですよ。

最後に「抹茶」は、「被覆栽培」をして摘みとったあと、茶葉を揉まずにそのまま乾燥させて石臼などで挽いたものです。玉露などは摘み取ってから揉んで形を整えるのですが、抹茶はパウダー状にするんです。

左から陽の光を遮り栽培した鹿児島県産の「一番茶めがみ ほれぼれ」と一番茶の茎の部分だけを使った「会席ほうじ茶」

なるほど、日照の有無や摘む時期などによって違うのですね。伊藤園では何種類くらいの品種を仕入れていらっしゃるんですか?

堀井:それがすごく難しいご質問で……。仕入れている茶葉は品種、時期、産地により、毎年変わってくるんです。代表的な「やぶきた」をはじめ、稀少品種の「ゆたかみどり」、「かなやみどり」、「さえみどり」など幅広く取り扱っています。消費地の嗜好などを踏まえ、さまざまなお茶を組み合わせて製品に合う味わいづくりを行っているので、一言で何種類とは答えづらいんです。また最近では、品種や茶園ごとの特徴を楽しむシングルオリジンのお茶も注目されています。

では、伊藤園で一番売れている商品はなんでしょうか?

堀井:ティーバッグに入っていないリーフの商品ですと、「お〜いお茶 抹茶入り緑茶」が定番で人気があります。スーパーなどで気軽に買えるお茶なんですけど、蒸しが浅いのですっきりとした味わいで、抹茶入りなので緑色の水色がすごくきれいなんです。このクオリティーで100g500円というお値段なのですごく人気がありますね。

これからおすすめしたいのは「一番摘みのお〜いお茶1200」で、甘くてミルクのような味わいがある鹿児島県産の「かなやみどり」という品種を使っています。100g1200円なのでちょっと値が張るんですけど、1杯あたりで考えるととてもリーズナブル。だからこそ、私たちはぜひリーフでお茶を楽しんでいただきたいんです。

左から「お〜いお茶 抹茶入り緑茶」と「一番摘みのお〜いお茶1200」

温度によって濃度が変化する緑茶の3つの健康成分

緑茶は健康飲料としても注目されています。どんな健康効果があるんですか?

堀井:緑茶の健康成分としては、まずはカテキンがあります。お茶の味わいを作る成分は3つあり、お茶の渋みの元になっているのがカテキンです。カテキンはポリフェノールの一種で、日光をたくさん浴びたお茶に多く含まれています。


抗酸化作用や抗ウイルス作用があるとされているので、緑茶でうがいをするとインフルエンザの予防にも大変効果的だと言われているんです。コレステロールや体脂肪を下げる働きもありますので、弊社では茶カテキンを生かし、「血中コレステロールを減らす」働きと「脂肪の吸収を抑えて排出を増加させる」働きを持つ特保飲料「2つの働き カテキン緑茶」を発売しています。

体に嬉しい効果ばかりですね。

堀井:2つめの健康成分がカフェインです。カフェインというとコーヒーというイメージをお持ちかもしれないですが、お茶の苦味に寄与する成分で、緑茶にも含まれています。覚醒作用や利尿作用があるので、朝飲むとシャキッと目覚めることができますよ。3つめの成分は、お茶の旨みに寄与するアミノ酸(テアニン)です。リラックス効果があって、睡眠の質を高めると言われています。

お茶の種類や淹れ方によって健康成分の濃度は変わるんですか?

堀井:お茶を淹れるお湯の温度によって、成分の出る度合いは変わってきます。低い温度で淹れるほどアミノ酸がよく出て、高い温度で淹れるとカテキンとカフェインが出やすくなるんです。95℃くらいの熱いお湯で淹れていただくと、カテキンがたっぷり入った渋みの強いお茶になります。

温度が影響するんですね。1日のうちで、より効果的に健康成分を摂取できるタイミングってあるんでしょうか。

堀井:健康効果としては、実は飲む時間帯はあまり関係ないんです。カテキンやカフェインは体内に長時間留まれず、時間の経過と共に体外に出てしまうんです。なので、飲むタイミングというよりも、こまめに飲むことを意識していただくのがいいと思います。

お茶が美味しく飲める温度は50〜90℃!4つのポイントをおさえてお茶を淹れよう

美味しいお茶を淹れる方法をぜひ教えてください。

堀井:茶葉の量はだいたいティースプーン一杯、2gが1人分と考えてください。2人分なら4g入れます。上煎茶の場合、湯冷ましをしっかりするのがポイント。湯冷ましというのは、沸騰したお湯を一度湯飲みなどに移して温度を下げることで、だいたい10℃下がります。

高い温度で淹れるほどカテキンとカフェインがよく出る、ということは苦味と渋みのあるお茶になるので、適切な温度に下げると旨み成分のアミノ酸がたくさん出た美味しいお茶になるんですよ。それに、湯飲みに入るお湯の量が把握できるので、お湯が急須に残ってしまうこともなくなります。

今まで目分量で入れて、急須にお湯を残してしまっていました……。

堀井:お湯の量の目安は一人分で約100mlですね。湯冷ましをすると、湯飲みを温めることもできるので、これからの季節はさらにお茶が美味しくなりますよ。次に湯冷ましをしたお湯を急須に入れます。急須に蓋をして30秒待って浸出させます。待っている間に急須を揺らす方が多いのですが、それはグッと我慢してください!

ダメなんですか!?

堀井:そうすると雑味やえぐみが出てしまうんです。注ぐ時のポイントとしては、一杯を1回で淹れきってしまうのではなく、味の濃さを均等にするため、2つ湯飲みがあったら、交互に注ぎ分けてください。急須が90度お辞儀するような形で淹れていきます。特に、最後の一滴には美味しさが詰まっているので、それを注ぎ切って終わりです。

お茶を美味しく淹れるには、茶葉の量、お湯の量、お湯の温度、浸出時間、この4つがポイントですね。

いただくと、確かに柔らかい味です! お茶が一番美味しい温度は何度でしょうか。

堀井:お茶の種類によるんです。上煎茶は80℃がオススメですし、普通煎茶は90℃くらい。ほうじ茶や玄米茶は湯冷ましをせず、熱湯で淹れてください。熱湯はだいたい95℃くらいですね。玉露は逆にすごく低めの温度、50〜60℃で淹れると、出汁のようなまろやかな味わいになります。また、1煎目と2煎目も温度は変えるのが鉄則です。2煎目以降は湯冷ましせず、熱いお湯を直接急須に入れていただいて、浸出時間も10秒くらいで淹れてください。

水出しでいただく場合のポイントはありますか?

堀井:水出しで淹れる場合は、茶葉の量を1.5倍にしてください。1杯3g、2杯入れる場合は6gですね。水は軟水がオススメです。浸出時間も長めで、3分間お待ちください。

こちらもいただくと、同じ茶葉で入れているのにまた違った味わいですごく甘みがあります!

堀井:緑茶って苦いとか渋いというイメージがあって飲まないお子さんもいるんですが、水出しだと「美味しい!」と言ってくださる方も多いんです。

水出しに使用した茶器は伊藤園が開発した「Ocha SURU? Glass Kyu-su 01」

オススメのお茶のアレンジメニューがあれば、教えてください。

堀井:水出しのお茶と果汁100%のフルーツジュースを合わせる「セパレートティー」がオススメです。パイナップルやオレンジなど好きなジュースをコップに半分くらい入れていただいて、そこに緑茶をふちから沿わせて注いでいくと、キレイに二層に分かれるんです。緑茶の緑にジュースの色が映えて見た目にもすごくきれいですよ。

それとこれからの時期なら、ほうじ茶ラテはいかがでしょうか。ミルクを温めるのってちょっと面倒に感じる方もいらっしゃると思うんですが、ほうじ茶を少し濃い目に淹れて、そこにチューブの練乳を入れるだけで簡単にほうじ茶ラテが楽しめますよ。

へー、それは初めて聞きました。いろいろな楽しみ方があるんですね。

堀井:実は緑茶は食べても美味しいんですよ。飲み終わったお茶の葉にポン酢とかつお節を混ぜてお召し上がりください。他にも、梅やツナ、ジャコなどに合わせて、チャーハンに入れても美味しいです。使い終わった茶葉にもカテキンなどの健康成分は残っているので、体にもいいんです。ただ、水分を含んだまま置いておくと腐敗の原因になりますので、キッチンペーパーなどでギュッと絞って水分を十分に取っておくのがポイントです。

食べても美味しいとは知りませんでした!

堀井:お茶は飲んでも食べても美味しいので、もっともっとみなさんに身近に感じていただきたいです。特に若い世代の方は淹れるのが面倒、敷居が高いと感じているかもしれないのですが、お茶の時間を在宅ワークの気分転換としても、コミュニケーションの方法としても、日常生活に取り入れていただけたら嬉しいです。

まとめ

世界で初めてペットボトル入りの緑茶飲料が伊藤園から発売されたのが約30年前。今ではお茶をペットボトルで買うことは当たり前となり、健康効果も注目を集めるようになるなど、お茶を取り巻く環境は大きく変わってきました。ですがその一方で、リーフでお茶を淹れる人は減ってきているそう。

「もっと若い人にもリーフでお茶を飲むことを習慣にしてもらうため、お茶の淹れ方のセミナーを行ったり、洋風のインテリアにも合うガラスの茶器を作ったり、伊藤園ではお茶の裾野を広げる活動に取組んでいます」と堀井さん。その甲斐あってか、ステイホーム期間中にはリーフの売り上げが増加。在宅で時間にゆとりができた分、リーフから丁寧にお茶を淹れる人が増えているんだとか。

みなさんも忙しい日々の中、1日数分でも心を落ち着けてお茶を淹れることで、豊かなおうち時間を過ごしてみてはいかがですか? 気持ちをシャキっとさせたり、リラックスできたりするうえに健康効果まで得られるので、お茶を飲まない手はないですよね!

INFORMATION

株式会社伊藤園

(本社)
〒151-8550 東京都渋谷区本町3丁目47番10号
公式HP:https://www.itoen.jp/

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マガジンど 編集部

あらゆるものの温度について探究していく編集部。温度に対する熱意とともに、あったかいものからつめた〜いものまで、さまざまなものの温度に関する情報を皆さんへお届けします。

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