FOOD 2020.12.21

低温調理でしっとり食感 ヒレ肉を使ったフレンチ風「酢豚」

虎峰シェフが作る「新しい中華」の定番メニュー 200℃

和食やフレンチの技法を取り入れた中華料理が楽しめる、モダンチャイニーズの注目店「虎峰」。ミシュラン星付き店でスーシェフを努めた後、31歳という若さで店を任された実力を持つ山本シェフに、 家庭でもできる定番中華料理のアレンジレシピを教えていただきました。

Writer:坂口博美/Photographer:橋本千尋

今回作り方を教わったのは、王道メニューでありながら意外と作るのにコツがいる「酢豚」。揚げた豚肉が硬い、衣がカリッとしない、水溶き片栗粉がダマになる、そもそもあんの味付け自体がうまくいかない……など、初心者にはなかなか落とし穴の多い料理です。

レシピを教えてくれたのは、六本木にあるモダンチャイニーズレストラン「虎峰」の、山本雅シェフ。和食やフレンチの技法を取り入れた中華料理に定評のある山本シェフが、酢豚に新たな風を吹かせます。(山本シェフに、料理へのこだわりや想いを伺ったインタビュー記事はこちら

虎峰山本シェフ

通常の酢豚の作り方は、豚肩ロース肉と野菜を揚げ、最後にそれらをタレの入ったフライパンで一気に炒めて仕上げますが、今回ご紹介する酢豚は、それとは大きく異なる材料・手順で作ります。

完成品はこちら。肉はしっとり、周りの衣はサックリ軽く、甘みと酸味、うま味のバランスが絶妙なソースが、肉の味を引き立ててくれる、フレンチ料理のような優雅な一品です。

一番大きな違いは、豚ヒレ肉を使用することと、中華料理の調理手法のひとつ「低温調理」を使った肉への火の通し方。揚げ時間を短くおさえ、火から上げて5分間密閉した容器の中に入れ、余熱で火を通すので、肉がとてもしっとり仕上がるんです。

それでは、さっそく作り方を見ていきましょう!

作り方

酢豚の材料

材料

  • 豚ヒレ肉 200グラム程度
    ・お酒 大さじ1
    ・お水 大さじ2
    ・胡椒 少々
    ・塩 ひとつまみ
  • ピーマン 1/3程度
  • パプリカ(赤、黄) 1/3程度
  • 揚げるとき用の油 適量
  • タレ黒酢 100cc
    ・ハチミツ 80cc
    ・砂糖 80cc
    ・酒 30cc
    ・醤油 30cc
    ・塩 30cc
    ・米酢 10cc
    ・たまり醤油 15cc
    ・水溶き片栗粉(片栗粉1:水2 の分量で、〜50cc程度準備しておくと安心)

下準備

  • 肉を冷蔵庫から出して1時間ほど常温で置いておきます。
    こうすることで肉の中心温度が上がり、低温で火が通りやすくなります。
  • 調理に取りかかる前に、タレを作っておきます。
    1.まずは小鍋を準備し、黒酢とハチミツを投入。鍋を火にかけ、沸騰したら火を弱め5分間煮込みます。
    2.次に、砂糖、酒、醤油、塩、米酢、たまり醤油を投入し、もう一度火を中火にします。沸騰したら火を止め、完成です。

まず、材料を切っていきます。

野菜を切る様子

野菜は、食べやすい大きさにカット。大きさを揃えて乱切りにします。

野菜を切る様子

玉ねぎも同じ大きさに切っていきます。

肉は2〜3センチくらいの厚みにカットします。ヒレ肉は、幅5〜6センチ程度のものを使用しました。

次に、肉に下味をつけます。ボウルやバットなどを準備し、その上で作業しましょう。

肉に下味をつける様子

まず、肉の両面に塩ひとつまみをかけたら、お酒大さじ1、水大さじ2、胡椒少々をふりかけ、それらを肉に含ませるようにして、少しなじませます。

水を含んだプルプルの肉
下味がなじんだ肉は、見た目にも分かるプルプルとした質感になります。

ポイント

こうすることで肉に水分をふくませることができるので、しっとりとした口当たりに仕上がります。揚げたときの油ハネを防ぐために肉の水分をしっかり拭き取っている人も多いかもしれませんが、この一手間が、実は肉をパサパサにしてしまう原因のひとつ。

油ハネは、このあと紹介する片栗粉のまぶし方で防ぐことができるのでご安心を!

油につけると菜箸から泡が出る様子

下味を付け終わったら、いよいよ「揚げ」の工程に入っていきます。

まず、油を200〜220度に熱していきましょう。目安は、お箸を油に入れたとき泡が建つ程度。初心者の人には判断が難しいので、はじめのうちは温度計を使って感覚を身につけるのがオススメです。

油を温度計ではかる様子

揚げているときの温度を安定させるため、多めの油を使うと安心ですが、温度管理がしっかりできれば、少なめの油で揚げても大丈夫です。

肉に片栗粉をつける

油の温度が200〜220度になったら、肉に片栗粉を付けます。

ポイント

この、「揚げる直前」に片栗粉をつけるのが大切! 
慌てないよう先に衣を肉につけてから油を温めたい気持ちになるものの、衣をつけて時間が経つと肉の水分が粉に吸収されてしまい、衣が分厚くなる、油ハネしやすくなる、肉がパサパサになる……など、デメリットがたくさん。よほど肉が多くなければすぐに終わる工程なので、油が温まったのを確認してから、落ち着いて取り組みましょう。

肉を成型する
形を整えた肉

片栗粉を付けたら、揚げていく肉の厚さと形を整えます。こうすることで、複数の肉を揚げるときも火入れが一定になります。

肉を揚げる

いよいよ肉を油の中に投入! 1分のタイマーを設定して、揚げていきます。
今回は肉の火入れが要となるレシピなので、できるだけ油の温度を保ちながら、時間通りに揚げるようにしてください。

肉を油からあげる
揚げ上がりの色味はこれくらい
きつね色に揚った肉
容器に入れ肉を蒸らす
容器に入れて(写真左)、フタをして(写真右)5分

揚げ終わった肉は、密閉容器に入れ5分間休ませます。これが、中華版低温料理を使った、肉を柔らかく仕上げる最大のポイント!

肉を切る山本シェフ

5分経過したら、肉を横半分に切り、火加減を見てみましょう。

肉のピンク断面

肉の中心を触ってみて温かくなっていたら、熱の通りはOK!

いいお肉を使うともっと鮮やかな色味に仕上がるらしいのですが、今回はスーパーでも手に入るヒレ肉を使っていただいたので、少し白っぽくなっております。

野菜を中華鍋で火にかける
油にくぐらせるだけ、というイメージ。火が通り過ぎていないので、野菜はシャキシャキです。

肉を休ませている間に、野菜を揚げます。肉を揚げたときに充分油は温まっているので、野菜を油に一瞬通してあげるだけで大丈夫です。

塩をふる山本シェフ

揚げ終わったら、塩ひとつまみをかけて味を付けます。

タレと片栗粉を中華鍋で火にかける

最後に、タレにとろみを付けていきます。

水とき片栗粉(片栗粉1:水2 の分量で、〜50cc程度準備しておくと安心です)を準備しておき、下準備で合わせておいたタレの材料を火にかけます。

タレが沸騰したら、水溶き片栗粉を少しずつ足し、好みの固さになったら火を止めましょう。

ポイント

片栗粉がダマになる、という人は、必ず沸騰してから水溶き片栗粉を入れることと、入れたらすぐによくかき混ぜるようにしましょう。

盛り付け

肉を切り、盛り付けをしたら完成です!

見た目も味も高級料理店のメニューのような「酢豚」が完成!

お洒落に盛り付けられた酢豚

タレを敷き、その上に肉を置いて、両脇に野菜を添えた盛り付け。最後にタレをスプーンですくってライン上にかけると、こんなにおしゃれな見た目に!

お洒落に盛り付けられた酢豚

こんな風に野菜を肉の横にきゅっと添えて、タレを横にたらすだけでもステキに仕上がります。

水分をしっかり含ませ、低温調理で仕上げたお肉は、ものすごいしっとり感!!!!
品のあるタレがお肉の味をしっかり引き出しており、一口食べた瞬間から美味しさを確信できるほど、食感もお味も最高レベルの一品に仕上がっていました。

これが作れたら料理上手と言っていいレベルの一品ですが、今回すごく丁寧に山本シェフがポイントを説明してくれたので、料理初心者の人もこの美味しさをしっかり再現できると思います。

お肉に水を含ませる、衣は揚げる直前に付ける、など、これまで意識したこともなかったシェフの料理のテクニックも盛りだくさんだった今回のレシピ。ぜひ、気になった方はご自宅で再現してみてはいかがでしょうか?

INFORMATION

虎峰

住所:東京都港区六本木3-8-7 PALビル1F
電話:03-3478-7441
営業時間:18:00、20:30 二部制
定休日:毎週日曜日、年末年始
URL:https://www.koho-roppongi.com/

PRODUCED by

山本雅さん

大阪の四川料理店で料理人のキャリアをスタート。スイスホテル南海大阪のレストラン「中国料理 エンプレスルーム」で4年間修業後に上京。「ミシュランガイド東京」一つ星の名店「MASA’S KITCHEN」で約5年間経験を積みスーシェフを務める。フランス料理店を経て、2016年4月に「虎峰」料理長に。

坂口 博美

都内在住の編集者・ライター。2007年にキャリアを開始。タウン誌の編集を長く手掛けていたことから、街の紹介や飲食店レビューなどを多く手がける。現在は、旅行やインテリア、ガーデニングなど、個人的にも興味のあるジャンルを幅広く開拓中。

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