SPECIAL 2020.12.30

照明の色温度で冬のおうち時間を快適に。YAMAGIWAの開発者に聞く照明選びのコツ

Color temperature of Rebio 3000K

皆さんは部屋でどんな照明を使っていますか? 冬は日が沈むのが早くなるので、照明を灯す時間も長くなります。そんなあかりが存在感を増す季節に、部屋の照明について考えてみてはいかがでしょうか。照明は部屋の印象を大きく変える重要なアイテムです。部屋での過ごし方や使う人によって、最適な照明は違うはず。そこで、美しく機能的な照明の開発・輸入を行なっている株式会社YAMAGIWAで商品の企画開発に携わっている岡夕紀子さんにお話を伺いました。「照明を選ぶ時には色温度を1つの参考にしてください」という岡さん。心理的にも視覚的にも大きな効果があるという照明の「色温度」の秘密に迫ります。上手なあかりの選び方やおすすめの照明器具についても教えていただきました。 

Writer:末光京子/Photographer:枝松則之

今日お話を伺ったのは……

株式会社YAMAGIWA 商品企画開発部 岡夕紀子

2013年入社。YAMAGIWAオリジナル照明の商品企画をはじめ、国内外の仕入ブランドの選定など、意匠照明の企画、プロダクトマネジメントを担当している。2017年度グッドデザイン賞を受賞した、文字の読みやすさを追求したLEDタスクライト「Rebio(レビオ)」では販促企画を担当。また近代建築の三大巨匠の1人、フランク・ロイド・ライト生誕150周年を機に開催し、話題を呼んだ展示会の企画運営など幅広く担当している。

視覚的・心理的にも効果大!照明選びは色温度を参考に

家具やインテリアはこだわって選ぶのに、照明は備え付けのものをそのまま使っていたり、とりあえず間に合わせで買ったものをずっと使っていたり、選ぶのが後回しになっている人も多いと思います。照明を選ぶ時、まず何を考えるべきなのでしょうか。

岡夕紀子(以下、岡)

照明を選ぶ時は、取り付ける部屋の広さなどを考えるのはもちろんなのですが、まず、その部屋で自分がどういうふうに過ごしたいかを具体的にイメージすることが大切だと思います。

とはいえ、照明は実用的な面もあるので、どういうものを選んだらいいのか迷ってしまう人もいると思うんです。電球の色や明るさについても教えていただけますか。

岡:まず照明には、「シャンデリア」や「スタンド」、天井から吊り下げる「ペンダント」、天井面に直接取り付ける「シーリング」、壁に付ける「ブラケット」、天井に埋め込む「ダウンライト」、物を照らすための「スポットライト」などがあります。電球は、白熱電球や蛍光灯、ハロゲンランプ、HIDランプなどがありますが、最近ではLEDが主流となり、そのような電球の光を再現できるようになりました。

それから、あまり知られていない言葉だと思いますが、照明器具を選ぶ時には色温度を参考にしてもいいかもしれません。

色温度……と言いますと?

岡:色温度とは光の色味を数値で表したもので、ケルビン(K)という単位で表します。色温度が高いほど青白い光で、色温度が低いと赤みがかった光になります。

それは知りませんでした! では、色温度を参考に照明器具を選ぶ、というのはどういうことなのでしょうか。

岡:光の色温度によって、空間の雰囲気はガラッと変わるんです。昼光色といわれる6500Kの青白い光は、爽やかな印象で部屋を明るくすっきりと見せてくれます。昼白色といわれる5000Kの光は、自然な色合いの白色光で活動的な印象となり、作業空間にもぴったりです。

電球色といわれる2700〜3000Kのあたたかみのある光であれば、落ち着いた空間を演出できます。視覚的にも心理的にも、色温度によってまったく異なる印象になるんです。ですから、リビングや寝室、書斎など、色温度が与える効果を考えながら照明器具を選んでいただくといいと思います。

色温度によって、同じ人と対面しても印象が変わる、なんていうこともあるんですか?

岡:光の色温度によって、顔映りや印象も大きく変わってきます。白っぽい光の中で会うと、元気でフレッシュな印象を与えられますし、あたたかみのある光であれば、落ち着きや親密さを演出できると思います。色温度によって会話が弾んだり、人との距離感が近づいたりという心理的な効果もあると思いますよ。

様々な種類や形、色温度、明るさの照明が並ぶYAMAGIWAのショールームの一角。用途やシーンに合わせて、実物を見て選んでほしい

照明は工夫次第で用途やシーンに合わせた様々な使い分けが可能

部屋が狭いなど、住環境に満足していない人もいると思うのですが、あかりによって同じ部屋でも過ごしやすくすることはできますか?

岡:壁面や天井面を明るく照らしてあげると部屋を広く見せることができますよ。間接照明やブラケットでもいいのですが、もっと手軽にスタンドライトを使って壁面や天井面を照らすことで、空間に奥行きがあるように感じられます。床に背の低いスタンドライトを置くことで、目線が低くなり落ち着いた雰囲気を演出するなどの工夫もできますね。

最近は在宅ワークが増えて、リビングで仕事をするし、リラックスタイムも過ごすという方が多いと思うんです。そういった場合はあかりをどう使い分ければいいのでしょうか。

岡:それならスタンドライトを用途に合わせて使い分けるのがおすすめです! 仕事や作業をする時には手元を照らすタスクライト、夜にくつろぎたい時には、ソファの脇や床にテーブルライトやフロアライトを置くなど。テレワークの時に私はタスクライトを使っているのですが、はかどり具合が違ってくるんです。あかりは一ヶ所に意識を集中させる効果もあるので、手元に明るさのポイントを持ってくるのも効果的です。

それから、弊社のシーリングライトには色温度を切り替える「調色」機能が備わっているものもあります。例えばリビングは、時間帯によって過ごし方が違いますよね。朝は仕事や学校に行くので、目を覚ますような活動的な雰囲気が欲しいですが、夕方は自分だけのくつろいだ時間を過ごしたい、など。そういったシーンに合わせて、光の色を切り替えて使っていただけるんです。1日の時間帯に合わせて色温度を変えていくことで、私たちの体内時計や生活リズムを整えるのも助けてくれると思います。

照明器具を開発される際に、重視されているポイントはなんですか?

岡:家の中のあかりは実用的な側面もあるので、部屋に必要な明るさがきちんととれているのか、空間に対してあかりの効果が出ているのかということ。それから、部屋で過ごす人がくつろいだりリラックスしたりできる心地よいあかりになっているのかということです。照明器具の特徴は、あかりを点けた時と消した時の2つの表情を持っていることだと思うんです。ですから、点けた時はもちろんのこと、消えている時も魅力的な照明器具にしたいと考えて企画開発しています。

アメリカの建築家であるフランク・ロイド・ライトがデザインした「TALIESIN(タリアセン)」シリーズ。あかりを消しても美しい佇まいだ

色温度と明るさにこだわって開発した、目が疲れないスタンドライト

YAMAGIWAの代表的なプロダクトであるRebio(レビオ)について教えてください。

岡:Rebioは弊社で扱っているスタンドライトの中でもとても人気のある商品で、「文字が読みやすい光」を追求して開発されました。

「文字が読みやすい光」とはどういうことですか?

岡:目が疲れないようにするには、目を凝らさなくても自然と文字がストレスなく読めるかどうかが重要なんです。印刷物の背景である紙面と文字色との差がしっかり出ていると、書いてあることがスムーズに目に入ってくるのですが、Rebioの光はそのコントラストがきちんと出ることが特徴です。

コントラストを出すのは難しいことなのでしょうか。

岡:「文字が読みやすい」と謳っている照明は他にもありますが、白くて強い光を当てることで、背景の白さを際立たせるという商品が多いんです。でも、Rebioの色温度は人間の目に優しいとされる日の出30分後の太陽光と同じ3000Kで、電球色の落ち着いた光でありながら、本や雑誌の紙の色を白く見せることができるLEDを使っています。そのため、部屋の雰囲気を壊すことなく、文字が読みやすい光を実現しています。

文字が読みやすいライトというと、すごく明るくて、目がチカチカしてしまうイメージがありました。

岡:Rebioは眩しさがないのに手元の文字はしっかり見えるので、目が疲れにくいんです。それから、アームの可動性に優れていて、スムーズに大きく動かせるので、必要なところに必要な明るさが取れてストレスなく使っていただけます。ソファやベッドのサイドに置いて使えるフロアスタンドタイプもありますので、くつろぎながら本を読むシーンにもおすすめです。光の質にこだわった、すごくYAMAGIWAらしい商品だと思います。

シンプルなデザインだから、どんな部屋にも馴染みそうですね。

岡:薄いヘッドと細いアームで構成されたすっきりとしたデザインなので、部屋のインテリアを邪魔することなく、書斎やリビングや寝室などいろいろな場所で使っていただけます。シンプルな中にも細部にまでこだわっていて、スイッチが目立たない場所についているのもポイントの1つ。ヘッドの内側についたタッチスイッチで明るさを簡単に調節することができます。

便利でいいですね。ほかにおすすめの商品はありますか。

岡:建築家の伊東豊雄さんにデザインしていただいた「MAYUHANA」という照明もおすすめです。グラスファイバーという素材の糸を繭のように紡いで二重三重にして作った丸いデザインで、ぼんぼりのような柔らかいあかりが特徴です。照明自体にボリュームはあるのですが、透け感があって圧迫感がありません。光が灯ると繭が重なり合う様子が美しく、洋室だけでなく和室でもコーディネートしやすいですよ。

左は建築家の伊東豊雄がデザインした「MAYUHANA」。右は、スウェーデンのデザイナー、ハンス-アウネ・ヤコブソンのパイン材を使用した「JAKOBSSON LAMP」

最後に、豊かな生活を送るには照明をどのように取り入れていけばいいのか、照明のプロからアドバイスをお願いしいます!

岡:私は、照明というのは部屋の中心で、顔のようなものだと思っていて。インテリアにはいろいろありますが、その中でも照明が一番空間の雰囲気をガラリと変えられるんです。どんなに素敵なインテリアを揃えても、あかりが心地いいものでないと、その部屋で過ごす時間の質が変わってきます。

だからこそ、そこで自分がどう過ごしたいか考えて照明を選んでいただきたいですし、ライフスタイルの変化に合わせて照明を変えていくのもいいのかなと思っています。照明を変えるのは大変という人は、スタンドライトなどのあかりを1つ追加するだけでも雰囲気は大きく変わりますので、あかりという存在をもっと身近に感じていただけたら嬉しいです。

まとめ

今まであまり意識してきませんでしたが、同じ部屋でも勉強や仕事がはかどる活動的な雰囲気の部屋になったり、リラックスした時間を過ごすことのできる部屋になったり、照明の色温度が与える影響はとても大きいことがわかりました。

自分が部屋でどう過ごしたいのかを具体的に想像して、上手に照明を活用したいですね。岡さんも在宅ワークの時間が増えたことで、今まであまり使っていなかったスタンドライトを活用するようになったそう。心地良い空間を作っていくためには、同じ照明を使い続けるのではなく、ライフスタイルの変化によってもっとフレキシブルに選んでいくことが必要なのかもしれません。

最近は、コードレスなど、より便利な照明も増えています。自宅で過ごすことが多くなった今だからこそ、部屋の照明を見直して、自分が本当に心地良さを感じられる空間作りにチャレンジしてみては? スタンドライトを1つ追加するだけで、理想の空間を手に入れられるかもしれませんよ。

*写真は全て 旧・東京ギャラリーショールームにて撮影。住所は新しいギャラリーのものを記載しています。

INFORMATION

株式会社YAMAGIWA

(本社東京ギャラリーショールーム)

 〒105-0014 東京都港区芝3-16-13 MARUWAビル3階

公式HP:http://www.yamagiwa.co.jp/

 

2021年1月8日オープン

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マガジンど 編集部

あらゆるものの温度について探究していく編集部。温度に対する熱意とともに、あったかいものからつめた〜いものまで、さまざまなものの温度に関する情報を皆さんへお届けします。

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