SPECIAL 2021.10.11

最近の冷蔵庫はどこまで進化しているの?パナソニックに最新事情を聞きました

minimum and maximum temperatures of NR-F607WPX -20〜8℃

すっかりステイホームが中心の新しいライフスタイルが定着して、自炊を楽しむようになった人も多いのではないでしょうか。そんな中、改めて見直したいのが冷蔵庫です。食材のまとめ買いやお取り寄せをすることが増えて、「もっと収納スペースが大きかったらいいのに」、「もっと鮮度にこだわって保存したい」など、冷蔵庫に求める機能が今までより増えているとか。 そこで、最新の冷蔵庫がどのくらい進化しているのか、パナソニック株式会社の冷蔵庫商品企画担当・水嶋理子さんにお話を伺いました。同社の冷蔵庫には、日々の研究によって導き出されたこだわりがたくさん詰まっているそうです。また、賢い冷蔵庫の選び方や冷蔵庫の未来についても聞いたので、購入の際の参考にしてくださいね。

Writer:末光京子/Photographer:枝松則之

今日お話を伺ったのは……

パナソニック株式会社  
キッチン空間事業部 冷蔵庫・食洗機BU 国内マーケティング部 水嶋理子
2019年入社。日本国内向け家庭用冷蔵庫のマーケティングを担当。

今日お話を聞いた製品は……

NR-F607WPX
「AIエコナビ」を搭載したIoT対応冷蔵庫。クーリングアシスト機能、微凍結パーシャルなど機能が多彩。たっぷり収納できる大容量600Lで幅68.5cm。冷凍室が真ん中タイプ。
https://panasonic.jp/reizo/products/NR-F607WPX.html

NR-F516MEX
はやうま冷却・はやうま冷凍・微凍結パーシャルなどの機能を搭載。容量は513Lで、幅68.5cmのすみずみまで使いやすい冷蔵庫。野菜室が真ん中タイプ。
https://panasonic.jp/reizo/products/NR-F516MEX.html

はやうま冷凍・冷却、微凍結パーシャル機能で食材のうまみと鮮度をキープ!調理の時短にも

冷蔵庫の最新機能について教えていただきたいのですが、パナソニックのNR-F607WPXにはとてもたくさんの機能があるんですよね。

水嶋理子(以下、水嶋) 

弊社の冷蔵庫は年々進化していて、NR-F607WPXにはパナソニック独自の技術である「はやうま冷凍」「はやうま冷却」「微凍結パーシャル」など、おすすめの機能がたくさんあります。

まず、「はやうま冷凍」とはどんな機能なのですか?

水嶋:冷蔵庫の中央に「クーリングアシストルーム」という部屋があり、その中のアルミプレートの上に食材を置いて「はやうま冷凍」をすると、食材の量や種類により異なるため目安にはなりますが、通常の冷凍室よりも約5倍の速さ、おおよそ30分以内※で凍結できるんです。 ※最大氷結晶生成帯の通過時間

クーリングアシストルーム。冷蔵室内の操作パネルや冷蔵庫専用アプリ「Cool Pantry」で操作して、「はやうま冷凍」や「はやうま冷却」などの設定ができる

そんなに早く! それは便利ですね。 

水嶋:クーリングアシストルームには専用の冷却ファンが付いていて、従来の商品と比べると約8倍という大風量の冷気を一定時間当て続けることで急速冷凍を実現しました。「はやうま冷凍」には45分と60分という2つの設定があり、お肉1パックや野菜1袋程度であれば、45分で凍結できて、アツアツのご飯であれば60分で凍結できます。

食材を素早く凍らせることと、美味しさをキープすることには、どんな関係があるのでしょうか?

水嶋:−1〜−5℃は「最大氷結晶生成帯」と呼ばれていて、水分が凍る温度帯です。近年の研究によると、冷凍している時にその温度帯をいかに早く通過するかが、美味しさの鍵になるとわかってきたんです。通常冷凍ですと、その温度帯を通過するのに約150分程度かかりますが、「はやうま冷凍」は約1/5のスピードの30分くらいで通過することができ、解凍時のうまみ成分の流出を抑えて美味しさを守ります。

「はやうま冷凍」は、食材のうまみを保持したまま冷凍できるので、お肉のドリップを少なくしたり、ご飯やパンの水分量を維持することができるんです。普通であれば、冷凍できないと思われがちな唐揚げも外はサクサク、中はジューシーな食感をキープできます。変色したり霜がつきがちな野菜も、鮮やかな色味のまま、くっつかずパラパラに保存できるんです。

パラパラに保存できると、使いたい分だけ解凍できるのですごく便利ですね。では、「はやうま冷却」についても教えてください。

水嶋:こちらもクーリングアシストルームを使った、急速冷却の機能です。アツアツのお弁当も、約3分でおよそ25℃以下にできるんですよ。

25℃というのは、どういう意味のある温度なんですか?

水嶋:約45〜25℃は、細菌が活発に活動する温度帯と言われています。例えば、炊き立てのご飯は70℃くらいですが、ご飯をお弁当に詰めた後は、粗熱をとるために出しっぱなしにしておくことが多いですよね。そうすると、約45〜25℃の温度帯をゆっくり通過することになってしまい、雑菌の繁殖の危険が増えてしまうんです。「はやうま冷却」では、その温度帯を早く通過することで細菌の活動を抑えられるようにしています。

なるほど。忙しい朝にお弁当を冷ます時間を短縮できるうえに、菌の繁殖も防げるなんてありがたいですね。

水嶋:他には、粗熱とり以外にも、下味つけにも便利なんです。例えば、鶏肉は急速に冷やすと、肉の表面が凍結して細胞の間に隙間ができるので、味が染み込みやすくなります。加熱後は、表層の調味液によって水分が保たれ、肉本来のうまみが保たれます。調理の時短になるだけでなく、通常の冷蔵庫より美味しく仕上がりますよ。

いいですね。「微凍結パーシャル」という機能は、通常のチルドや冷凍とはどう違うのでしょうか。

水嶋:こちらは冷蔵庫内のパーシャルルームを使った機能で、ルーム内はちょうど食材が凍りはじめる約−3℃をキープしています。完全に凍らせてしまうと、解凍の手間がかかりますし、0〜2℃という通常のチルド機能だと保存期間が短くなってしまいます。それを−3℃という完全に凍る前のギリギリの温度にすることで、解凍要らずで調理が楽なうえに新鮮さもキープできるんです。

冷蔵室内のパーシャル/チルド切替室。食品の表面からすばやく微凍結の層をつくるため、酸化を抑えて肉も魚も美味しく保存できる ※パナソニック調べ。運転状況や食品の種類・状態や量によって、効果が異なります

−3℃であれば、解凍なしで調理できるんですか?

水嶋:はい。食材をそのまま切ったり、重なったお肉も必要な分だけはがしてすぐ使うことができます。豚肉や牛肉は最長約14日間、傷みやすいミンチでも約10日間、魚でも約7日間は保存できるんですよ。

それはかなりありがたいですね。「はやうま冷凍」と「微凍結パーシャル」はどう使い分けたらいいのでしょうか。

水嶋:1〜2週間以内に使い切る食材は「微凍結パーシャル」で、2週間以上まとめてストックしておきたい食材であれば、「はやうま冷凍」での保存がおすすめです。

なるほど。お聞きした3つの機能以外に、水嶋さんのおすすめポイントはありますか?

水嶋:そうですね。通常、冷蔵庫にはコンプレッサーという機械が絶対に入っていて、だいたい一番下の引き出しの奥におさまっているので、引き出しが奥まで使えないんです。その点、弊社の商品では、冷蔵庫の一番上のちょうど手の届きにくい部分にコンプレッサーがおさまっています。

女性の平均身長を考えても、最上段の奥には賞味期限切れの食品が溜まってしまいがちです。そこが手の届く範囲になっていて、逆に下の野菜室や冷凍室の引き出しが全開でき、奥まで広く使えるところがおすすめポイントです。お客様にも好評いただいています。

冷蔵庫の買い替えタイミングと賢い選び方

ここからは、冷蔵庫の買い替えや選び方について伺います。冷蔵庫は故障以外では、引っ越しなどがないと買い替えを考えない方が多いと思うのですが、買い替えるべきタイミングってあるんでしょうか?

水嶋:内閣府の調査だと、平均的な買い替え時期は使用開始から12〜13年となっています。ただ、そもそも冷蔵庫を何年使っているか普段から把握されている方って少ないと思うんです。まず一度、ご自宅の冷蔵庫をいつから使っているか確認するのがいいかもしれません。

機械音が大きくなったとか、冷えにくくなってきたとか、そういった不調が出てきた時に買い替えを検討すると、突然使えなくなってから焦って買い替えることになってしまいます。そうすると、欲しい色や容量のものが買えない場合もあると思うんです。なので使用年数で検討したほうが、前もって新しい冷蔵庫を選べるのかなと思います。

冷蔵庫の賢い選び方についても、教えてください。

水嶋:まずは、寸法と容量を確認してください。そもそも冷蔵庫がスペースに入るかどうかや、何人で使うのかも大切です。新婚の家庭であれば、将来子供が生まれて人数が増える可能性がありますし、逆にお子さんが独立して人数が減る場合もあります。必要な容量については、算出できるサイトがあるので、そちらを目安にしていただくのもいいかもしれません。

その次に冷蔵庫のレイアウトですね。冷蔵庫の真ん中の引き出しは野菜室がいいのか、冷凍室がいいのか、よく使うスペースがどこにあるのかを確認していただけたら。そのうえで、各社様々な機能があるので、冷凍することが多い方は冷凍に特化したもの、などを考えて選ぶのがいいかと思います。

NR-F607WPXの中央にある冷凍室は3段あり、しっかり引き出せるので奥まで使えるのがポイント

機能に目移りしてしまいがちですが、レイアウトも大事ですよね。日々の使いやすさが決まってくる部分です。

水嶋:そうなんです。弊社でも、真ん中は冷凍室がいいのか、野菜室がいいのかは幾度となく調査してきましたが、やはり五分五分という結果でして。年代によって好みの傾向はあるものの、以前お使いの冷蔵庫のレイアウトや、どの食材をよく使うかという生活スタイルによっても変わってきます。ですので、弊社では先ほどご紹介したNR-F607WPXは真ん中が冷凍室ですが、NR-F516MEXという商品では真ん中は野菜室を採用しています。

NR-F607WPXとNR-F516MEXは、他にどんな違いがありますか?

水嶋:NR-F516MEXでは、先ほどのクーリングアシストルームにあたる部分が、「微凍結パーシャル」と「はやうま冷凍/冷却」の切り替え室になっています。冷蔵室の中にはチルドルームがあり、片ドアを開けるだけで引き出せるので便利です。その隣には、「アレンジストッカー」という食品を整理整頓できるケースがついています。

NR-F607WPXは冷凍室が真ん中の引き出しにあるので、冷凍を多く使用したりまとめ買いをされる方がメインターゲットです。一方でNR-F516MEXは野菜室が真ん中の引き出しにあるので、健康を意識して野菜をたくさん使う方などを中心に使っていただいています。

NR-F516MEXは、冷蔵室内の最下段がチルドルームで、中央の引き出しが野菜室という仕様

エネルギーやフードロス問題の解決も目指す冷蔵庫の未来

自分の生活スタイルを把握して、それに合った冷蔵庫を選ぶのが大切なんですね。今回お話を伺って、冷蔵庫がこんなにも進化していることに驚いたのですが、どのくらいのスパンで新機能が追加されているんですか?

水嶋:冷蔵庫メーカー全体をみても、1年に1回は新モデルを発売しています。冷蔵庫は24時間通電しているため、家庭の中でも消費電力が多いので、省エネの達成率が決められていまして。その基準を達成できるように、各社が省エネ性能を向上させています。

それから、最近進化が加速している理由の一つが、IoT機能です。弊社では、スマートフォンと連携してGPS機能を使い、外出している時にはしっかり省エネをしたり、お買い物をする前にはあらかじめ冷却できる、「AIエコナビ」という機能を搭載しています。最近の冷蔵庫にはこうしたIoT系の機能がどんどん追加されているので、機能の幅も広がっているんです。

では、将来的にはIoT系の機能がもっと進化していくことになるのでしょうか。

水嶋:私たちとしては、IoTに限らず、食の問題が解決する方向に進化させていきたいと思っています。例えば、フードロスを減らすために冷蔵庫にできることを考えたり。その結果、今年初めて「ストックマネージャー」という機能を搭載しました。卵パックが載るくらいの大きさの重量検知プレートがあり、その上に食材を載せておくと重さを感知して、冷蔵庫を開けなくてもその食材がどれくらい残っているのか、アプリで管理できるんです。

先ほどご説明した「はやうま冷凍」や「はやうま冷却」も、仕事や子育てで忙しい方々を冷蔵庫でどう手助けできるか、どうやって時短しながら美味しさをキープできるか、と考えて搭載した機能です。これからもそうした目線で、みなさんの快適な生活のお手伝いができる商品を送り出していけたら、と思っています。

「重量検知プレート」。上に置いた食材の重さを検知して、離れた場所でも残量をアプリで確認できる

まとめ

私ごとですが、我が家の冷蔵庫はもう10年以上使っているベテランなので、久しぶりに知った冷蔵庫の進化には、本当に驚かされました。冷凍や冷却機能が進化することで、食材を美味しく保存できるのはもちろんですが、それによって調理の時短や食材の適切な管理ができるなど、私たちの生活全体をサポートしてくれるんですね。そのサポート力は、もはや家族の一員のようです。

水嶋さんによると、コロナ禍によっておうち時間が長くなったことで、食品の収納量やドアの開閉回数も増えていて、冷蔵庫の使われ方が変わってきているそう。まとめ買いをすることも増えて、今までより容量の大きな冷蔵庫が必要になるなど、今は買い替えを考えるいいタイミングと言えるのかもしれません。日々感じるちょっとしたストレスや「こうだったらいいのに」という思いが、最新家電を利用することで解決できるなら、家電を頼るのも賢い方法ではないでしょうか。

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あらゆるものの温度について探究していく編集部。温度に対する熱意とともに、あったかいものからつめた〜いものまで、さまざまなものの温度に関する情報を皆さんへお届けします。

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