REFRESH 2021.04.29

花は一輪からでも楽しめる!青山フラワーマーケットの広報に聞いた、季節の花々と自宅で長く楽しむ方法

Suitable temperature for cut flowers 5〜10℃

昨年から外出自粛が続き、自宅で過ごす時間が長くなった方が多いのではないでしょうか。そうすると、木々や草花から自然を感じる機会もめっきり少なくなりますよね。その影響があってか、最近は自宅で花を楽しむ人が増えているといいます。今年3月8日の「ミモザデー」には、世界最大のオランダ生花市場で過去最高の売り上げを記録したんだとか。自由な外出が制限され、親しい人にもなかなか会えない状況の中、花で感謝を伝えあうイベントがこれまでにない盛り上がりを見せたのはちょっとわかる気がします。かくいう私も、実は自粛期間中に花を楽しみ始めた1人。部屋に花があるだけで、気持ちがパッと華やぐのを日々感じています。そこで今回は、青山フラワーマーケットを全国に約100店舗以上を展開する株式会社パーク・コーポレーションの広報担当、酒井陽子さんにインタビュー。花と季節の関係や、日々の生活の中に花を上手に取り入れるコツなどをお伺いしました。

Writer:末光京子/Photographer:橋本千尋

今日お話を伺ったのは……

株式会社パーク・コーポレーション コミュニケーション室広報担当 酒井陽子

2010年入社。入社時は本社 MD室 商品管理担当。2018年秋に現在の広報担当となり、取材対応やプレスリリース配信・異業種コラボレーション案件・インターナルコミュニケーションなどを担当。海外へ出店して以来、日本の花が海外から見ていかに高く評価されているかを知り、一人でも多くの人に、日本の花の素晴らしさを知ってもらうきっかけづくりに取り組んでいる。

好きな花と本数を自由に選べるのが青山フラワーマーケットのスタイル

青山フラワーマーケットには、どのような特徴があるのですか?

酒井陽子(以下、酒井) 

「Living With Flowers Every Day」をコンセプトに、日々の生活の中に当たり前のように花が存在することを目指しています。生花店というと、以前は奥に花が陳列された冷蔵庫があって、店員さんに予算や用途を伝えて花束をアレンジしてもらう形が多かったと思うんです。青山フラワーマーケットでは冷蔵庫を使わず、お客さまご自身で好きな花を1本からご自由に選んでいただけるスタイルをとっています。

取り扱っている花にもこだわりがあるのでしょうか。

酒井:季節感と鮮度には、非常にこだわっています。私たちは季節の行事をとても大切にしていて、例えば9月9日に日本の四季を彩る「重陽の節句」というマム(菊)を愛でる日があるのですが、そういった文化を紹介するなど、季節を花と一緒に楽しんでいただける提案をしています。

また、週3日仕入れを行っているのですが、次の仕入れまでに売り切るよう量を調整していて、同じ品種でも季節に合わせて仕入れ先を変えているので、商品の鮮度には自信があるんです。

仕入れはどのようにされているのですか?

酒井:仕入れ権限は、すべて各店舗に任されています。弊社のスタッフはみんな、花への情熱があふれていて、仕入れをおろそかにする店長は誰1人いません。店長は興味がある産地には自ら足を運び、大切なパートナーである生産者さんや市場の方々と密接にコミュニケーションを取っているので、お客さまに喜んでいただける商品をいつも取り揃えることができていると思います。

では、店舗によって取り扱う花のラインナップはかなり違うんですか? 

酒井:同じ地域にあっても、店舗ごとに取り扱う商品は違います。例えば、渋谷スクランブルスクエアには地下2階と2階に店舗が2つあるのですが、動線が異なるので、お客さまの層も全然違うんです。2階のフロアは比較的若くてファッションやトレンドの感度がより高いお客さまが多いので、新しくて珍しい品種やこだわった枝物などが喜ばれています。

商品展開も店舗ごとの客層に合わせて変えていらっしゃるんですね。

酒井:常にお客さまのニーズを考えて展開しています。最近はご自宅で花を楽しむ方が増えていて、特に人気なのが一番旬の花をメインに展開しているマルシェコーナーです。自粛期間以降、ご自宅で過ごされる時間が多くなり、外出して季節感を感じられない分、旬の花や枝でお部屋に季節を取り入れたいという方がすごく増えているんだなと感じています。

花が部屋にあるだけで、少し気持ちが上がるような気がしますよね。

酒井:実際に、花を見るだけでストレス値を下げる効果があることは実証されているそうです。やはりコロナ禍のストレスによって、みなさん無意識に花を求めていらっしゃるのかなと思います。自分のために初めて花を買ったとSNSで投稿されている方も多かったです。

自粛期間中、弊社の実店舗は休業していたのですが、再オープンする時、多くのお客さまが「再開を待っていたよ」とおっしゃってくださって。やっぱり花って生活を豊かにするためには欠かせないものなんだな、と実感しました。

店内でも人気のマルシェコーナー。毎週オススメの花を提案してくれる

花は四季を通して楽しめる!季節ごとの旬の花々

全国の店舗、例えば北海道と福岡の店舗では取り扱っている品種は違うのですか?

酒井:基本的には全国の店舗で取り扱う花のラインナップは違います。青山フラワーマーケットとして全国のお客さまにご紹介したい商品がある時は、本州から全国へ送ることもあるのですが、その分送料がかかってしまうので、なるべく地元の市場から仕入れるようにしています。それぞれの地域で、その時期一番旬を迎えている花を買うことができる、と思っていただければ。

撮影時には、店内は同系色でまとめられた旬の木々や花々が並んでいた

それぞれの季節の旬の花を教えていただけますか? まずは平均気温*が6.2〜24.0℃前後の春からお願いします。

*2020年東京の平均最低気温と平均最高気温

酒井:春の花は一番多いので悩んでしまうんですけど、みなさまに耳馴染みがあるものでしたら、チューリップ、スイートピー、ラナンキュラスでしょうか。あとはアネモネやパンジー、それからヒヤシンスなどの球根類もおすすめです。枝物ですと桃の花や桜、ミモザなど。4月になるとバラ、カラー、ダリア、ガーベラも旬を迎えます。

では、平均気温が19.8〜34.1℃前後の夏に旬を迎える花というと?

酒井:初夏ですとピオニー、いわゆるシャクヤクですね。弊社では店全体をピオニーで埋め尽くすくらい、毎年人気の花です。6月になると、アジサイやトルコギキョウとも呼ばれるリシアンサスなども旬ですね。真夏になると、クルクマというトーチのような独特の形をした花やアンスリウム、ユリ、あとは定番のひまわりですね。

葉物系もおすすめで、初夏から出回り始めるドウダンツツジもとてもよく売れます。観葉植物も冬になると寒さで弱くなってしまうので、育て始めるなら夏がおすすめです。

5月に旬を迎えるシャクヤク。花の色はさまざまあり、多くの品種がある

平均気温が10.1〜28.1℃前後の秋の旬には、どんな花がありますか?

酒井:バラとダリアは、秋にも旬を迎えます。秋になると寒暖差がグッと広がって、秋バラは色味や香りが深まるので、個人的にも好きな花の一つです。ダリアも秋は品種の豊富さを楽しんでいただけるかなと思います。

秋田に世界的に有名なダリアの育種家の方がいらっしゃるのですが、その方によって、それまでは仏花として知られていたダリアのイメージがファッショナブルに変わったんです。「黒蝶」という黒いダリアが代表作で、今やハイブランドの広告にも起用されるくらいおしゃれな花になりました。

平均気温が3.7〜13.3℃の冬は花が少ないイメージですが、旬の品種はなんでしょうか?

酒井:アマリリスなどは、この時期しか出回らないですね。最近は南半球から届くワイルドフラワーも人気です。ドライフラワーにもなりますし、おしゃれな印象があるので。あとは、クリスマスとお正月があるので、枝物や葉物は売り上げが伸びます。特にお正月には歳神さまを迎える準備をするため、この時期ならではのものがずらりと揃います。

日本だと仏花のイメージが強いマム(菊)ですが、ヨーロッパではおしゃれで日持ちもする花だとすごく親しまれていて。イギリスなどではコンビニでも売られているくらいポピュラーなんです。今はおしゃれな品種がたくさんありますので、ここぞとばかりに冬はマムを楽しんでもらえたら嬉しいです。

6月が旬のリシアンサス。花の色も咲き方も多種多様で、どの品種も日保ちが良い

ライフスタイルに合わせて花を長く楽しむ方法

切花は普通、どのくらい持つものなのですか?

酒井:時期や品種の特性にもよりますが、平均すると1週間前後でしょうか。冬でしたら、もっと長いこともありますが、だいたい1週間と思っていただけたら。

花を長持ちさせるには、適温があるのでしょうか。

酒井:切花には5〜10℃が適しているとは言われていますが、花中心の室温にして、人間がストレスを感じては元も子もないので、みなさんが過ごしやすい室温でよいと思います。ただ、花は乾燥と高温に弱いので、エアコンの風や直射日光が当たらないようにして、なるべく涼しい場所に置いてあげることが大事です。

そのほかに長持ちさせるポイントはありますか?

酒井:時間とともに花に元気がなくなってしまうのは、バクテリアのせいなんです。ですから、水が濁ってきたら、すぐ替えてあげると長持ちします。少なくとも1日1回は水を替えていただきたいのですが、そんなに手をかけられないという方も多いと思います。そういった時は、購入時に小袋でお渡ししている「フレッシュフラワーフード」という切花鮮度保持剤を使うのがおすすめです。それを水に入れると、3日に1回くらいの水替えでも長持ちします。

それと、水を替える時には必ず“切り戻し”をしてください。花の茎をスッと切ってあげることでみずみずしい面が出てきて、再び水をぐっと吸い上げられる状態になるんです。その時、吸い上げる面がなるべく広くなるように、切り口を斜めにしてくださいね。

水に溶かすだけで花瓶の水を清潔に保ち、花に栄養を補給。花の美しさを長く保ってくれる

花を飾ることに慣れていない人は、まず何から用意すればいいでしょうか。

酒井:花を長持ちさせるためには、できれば切り口がスパッとキレイに切れる専用の花鋏があるといいかなと思います。普通のハサミで切ると、茎の道管が潰れてしまうので、水を吸い上げようとしても詰まったような状態になってしまうんです。

花瓶は用意がなければ、空き瓶やコップなんかでもいいと思うのですが、自分が楽しみたいスタイルに合わせて何種類か持っていると、洋服を合わせるように選べるので花を飾る楽しみが増すのではないでしょうか。好きな作家さんを見つけて花瓶を集めるのも楽しいと思います。

自分の好みやライフスタイルにあったものを選ぶことが大切なんですね。

酒井:私は高さの違う一輪挿しの花瓶を2種類と、小さなブーケを飾る中くらいのピッチャータイプの花瓶、リサイクルガラスでできた大きな花瓶を持っていて、それらを使い分けています。

枝ものを飾りたい方は、大きめの花瓶がおすすめです。ドウダンツツジは1カ月くらい持ちますし、アセビはここ数年小さめのサイズのものが出荷されるようになって、最近はすごく人気が出てきました。切花より手入れが楽で長持ちするので、初心者の方にはいいですよ。それにリモート会議の背景に枝物があると、なんだかステキですよね(笑)。1本1,000円くらいで一気にお部屋がおしゃれになって、コスパもいいと思います。

店舗によっては、デザインもサイズも様々な花瓶を販売。花に合わせて花瓶を買えば、すぐ部屋に飾れる

人に花をプレゼントする際、「センスがいい!」と喜んでもらえる花の選び方ってありますか? 

酒井:おすすめはやはり旬なものですね。「たまたまお店を通りかかったら、スズランがかわいかったから買ってきたよ」って言われたら、同性からでも異性からでもすごく嬉しいですよね。逆に記念日でもない日に赤いバラの花束を贈られると、ちょっと違和感を感じてしまうと思うんです。「何かあった?」って理由を探してしまうというか(笑)。その点、季節の花は素直に思いが届きやすいかなと思います。

確かに高価な花束だとキレイに生けなきゃとか長持ちさせなきゃとか、もらったほうがプレッシャーを感じてしまいそうです。

酒井:贈る相手のライフスタイルや趣味を考えて、負担にならないサイズや価格の花を選べば、お花をもらって嫌がる方は少ないかなと思います。それに、どちらにしても切花の寿命は限られていますので、ずっと残って困ることもないですよね。そういった意味でも、切花はプレゼントに向いているのではないでしょうか。

酒井さんが実践している自分流の花の楽しみ方を教えてください。

酒井:基本的には複数で飾るよりも、一輪で楽しむことが多いです。今の自分の気持ちを花で表現するというと大袈裟ですけど、気持ちにマッチした花を直感的に選んでいます。店頭にあるたくさんの花の中から、今日はどの花を持って帰ろうって選ぶ時間が楽しいですし、家に帰って生けてあげて、かわいいなって癒される時間もいい。すごく気持ちが豊かになるんです。

花を買う時に「失敗したくない」とおっしゃる方は多いのですが、それは花の特性を知らないから、という面もあると思うんです。1輪ずつ飾ると、この花は長く持つんだ、など花の個性がわかってきます。そうすると様々な花を愛でられるようになると思うので、まずは1輪から始めてみてください。

青山フラワーマーケットのオリジナルローズ。バラ好きの顧客が特に多い店舗が現在取り扱っている

まとめ

自分の気持ちにフィットする花を一輪選んで愛でるという酒井さん流の楽しみ方は、花の組み合わせや生け方を気にする必要がなく、初心者でも気軽に花を生活に取り入れることができそうです。みなさんも自分の気持ちに向き合って、花屋さんでじっくりと花を選んでみてはいかがでしょうか。 

その時にポイントになるのが、旬の花を選ぶこと。酒井さんのお話を伺って、自分のためでも、家族や友人のためでも、花から季節を感じることが生活を豊かにする第一歩なのだと感じました。

また、パーク・コーポレーションでは新しい試みとして、2021年4月29日にリニューアルオープンした日本有数のバラ園であるいばらきフラワーパークの監修をされたんだそう。これまでの見るだけのバラ園から、五感を使って「感じる」フラワーパークに。自分で選んだバラの香りをアロマウォーターにして持ち帰れるなど、100の体感プランを楽しめるようになったんだとか。部屋で花を楽しみつつ、時にはバラ園を訪れて、思いっきりバラの香りに包まれるのもいい気分転換になりそうですね。

INFORMATION

株式会社パーク・コーポレーション

青山フラワーマーケット 南青山本店

〒107-0062 東京都港区南青山5-1-2 青山エリービル1F

公式HP(青山フラワーマーケット):https://www.aoyamaflowermarket.com/category/SHOP/

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マガジンど 編集部

あらゆるものの温度について探究していく編集部。温度に対する熱意とともに、あったかいものからつめた〜いものまで、さまざまなものの温度に関する情報を皆さんへお届けします。

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