熱いお風呂で冷たいビール!
代々木上原「BathHaus」新人店長 林真理恵の銭湯愛

/ 42℃

Life

クラフトビールとコーヒーが飲める銭湯「BathHaus」。 2月に運営会社がDSCL inc.に変わりリニューアルし、4月から新人店長に就任した林真理恵さんは、個人でも銭湯文化を広める活動をしています。銭湯×デザインの組み合わせを発信するクリエーターズマーケット「 湯沸かし市 」の主催者としての思いや、BathHausの現在と未来、お気に入りのお湯の温度まで、銭湯に対する熱い愛についてお聞きしました。

取材・文:菱山恵巳子  撮影:三浦えり

好きなことには情熱的。一般企業の内定を蹴ってBathHausの店長に

―まずBathHausの店長として働くようになったきっかけを教えてください。

いま新卒1年目なのですが、元々は学生アルバイトとして働いていました。2018年のBathHausオープン時に、当時のオーナーが「小杉湯」で開いていたトークショーでその存在を知り、実際に友人と遊びに来たらかっこいい空間にどハマり。

その場で気持ちがアツくなって、「バイトとか募集してないですか?」と聞いたことが働き始めたきっかけです。ちょうどスタッフを探されていたタイミングだったらしく、とんとん拍子に採用していただきました。

その後リニューアルをする際に、店長として働かないか声をかけていただき、 DSCL Inc.に入社し、今に至ります。

本当は就活もしていて、内定式まで出た企業もあったのですが、画一的な研修の段階から自分に向いていないモヤモヤ感もあって、思い切って内定を辞退。もっと熱中できることで働きたい! と、自分の情熱を信じて店長として働くことを決意しました。

大学の卒論がきっかけでじわじわと銭湯熱が高まる

―すごい行動力ですね! 銭湯にはいつから情熱を注いでいたのですか?

私は地元が浅草で銭湯が近所にとても多いのですが、大学の卒論のテーマ探しをきっかけに、じわじわと銭湯熱が高まり、ハマっていきました。

教授から「なんでも好きなことをテーマにしていい」と言われ、色々と模索しているうちに銭湯の魅力にハッとして。これまで当たり前のものとして存在していたけど、改めて見ると「宮造り」と呼ばれる神社仏閣のような建築がとてもかっこいいことに気付き…はじめはデザインから入りましたね。

そこから自分でも都内近郊の銭湯を巡ったり、銭湯のトークイベントに参加したりしていると、常連の方など自然と銭湯好きの知り合いも増えてくるんですよ。銭湯はフラットに人と繋がれる場ということも実感して、より虜に。

そして埼玉県川口市の「喜楽湯」に出会い、その時も「ここでバイトしたいです!」って自分から手を挙げて働かせてもらいました。

基本的に控えめな性格だとは思うんですけど、好きなことに関しては熱狂的に突進していくタイプかもしれません。

「好きを沸かす」クリエーターズマーケットを主催

―店長業の他に、銭湯文化を広める活動もされているとお伺いしました。

はい、同年代の銭湯好きな女性6人で、銭湯文化を広める「SENTO FOREVER」という活動をしています。「好きを沸かそう」というキャッチコピーで、銭湯やサウナに関するグッズを揃えたクリエイターズマーケット「湯沸し市」というイベントを定期的に主催していて、銭湯×デザインの組み合わせで、新しく銭湯の魅力にハマる人を増やす場を作っています。

―「SENTOFOREVER」をはじめたきっかけは?

私は後から入ったのですが、きっかけはメンバーからのスカウトです(笑)。

元々、趣味でハンドメイドのアクセサリー 作りをしていました。とある銭湯イベントでSENTO FOREVERのメンバーと出会い一緒に活動しようよ」って急に声をかけられました。銭湯にハマったからにはと、温泉マークをモチーフに作り始めたんですよ。

その後は銭湯のイベントに出展させていただく機会も増えました。当時からSENTOFOREVERが掲げている、「銭湯文化を永遠に!」という銭湯への熱意に共感して加入。なんだか銭湯っぽいラフなコミュニケーションから今に至りますね。

温泉モチーフのアクセサリー作りは今も続けていて、湯沸し市にも出店しています。今後BathHausにも置けたらと思っています。

客同士のコミュニケーションが生まれる温かスポット、BathHaus。

ーそんな銭湯愛溢れる林さんから見たBathHausのコンセプトやこだわりについて教えてください。

人が集まる団らんスポットでもあり、仕事や遊び帰りのクールダウンスポットでもあり……。どんなお客様でも家のようにくつろげる場所を目指しています。

カフェバースペースは犬も入店可能なので、昼間は代々木公園のお散歩帰りにコーヒーを飲みに来る方もいますし、夕方には保育園帰りの親子の姿も。ここでお風呂に入ってご飯を食べてくつろいでくれて、私も見ているだけでほっこりとした気持ちになります。

夜は遠方からも飲みに来たり、近所の方はお風呂に入りに来てくれたり、お客様の層は幅広いです。

お風呂はヒノキとタイルの2タイプなのですが、広すぎないのでお客様同士がちょうどいい距離感でくつろげます。

照明も自分で調節できて、脱衣所に備え付けのスピーカーから自分好みの曲を選んでBGMとして流すこともできます

そういった細かい会話のきっかけがあるので、お客様同士のコミュニケーションがより生まれやすい銭湯だと思います。

―やはりお客さん同士で仲良くなることも多いんですか?

かなり多いです! 先日もお風呂で仲良くなられて、一緒に上がってきて、そのまま一杯飲まれているお客様がいらっしゃいました。BathHaus起点で新しいコミュニティが生まれてくれるのは嬉しく思いますね。

―ちなみにお湯の設定温度にこだわりはありますか?

冬場は42℃でしたが、夏になってきたので40℃に変更しました。ぬるめのお湯に長く浸かっていただいて、ゆっくり会話も楽しんでいただければと思います。

お風呂上りには、冷えたビールで火照った体をクールダウン

―湯上りはみなさんクラフトビールを飲まれる?

大人の方はクラフトビールを頼まれる方がほとんどです。いま一番人気は「一意専心」という京都醸造のIPA。柑橘系と少しスパイシーな味の組み合わせで、爽やかな苦みが特徴です。

お風呂上りの火照った体に冷えたジョッキで飲むクラフトビールはたまりませんよ。飲めない方でも、「お風呂ドリンク」としてポカリスウェットやラムネも用意しています。

―クラフトビールやコーヒーのセレクトはどう決めているのですか?

ビール好きな社員がこだわって仕入れていますが、ブルワリーのお客様も多いので、お客様のつながりから新しいビールを仕入れることもあります。常に4種類ほど揃えていて、一樽ごとに入れ替え制なので、来る度に違うビールが 楽しめると思います。

コーヒーは 今いるバリスタのスタッフにセレクトしてもらい、私自身も美味しいコーヒーが出せるように修行中です。

店長としては冷静に働き、チームとしての温度感を優先

―店長として店舗運営をする際には、ご自身の銭湯好きの熱量をそのまま反映しているのですか?

働いている時は冷静ですね。スタッフに対して熱くなって怒ることは全くありません。スタッフは銭湯以外も皆様々な場所で働いてきた方なので、逆に教わることも多いです。

それこそコーヒーの知識はバリスタのスタッフから教わったり、飲食業界が長いスタッフから運営のノウハウを教えて貰ったり、とても勉強になります。 外国からのお客様も多く、英語が話せるスタッフもいて非常に助かっています。

私がリーダーとして熱意で引っ張っているというよりは、スタッフのみんなの力で、私の店長としての熱を上げてもらっている感じです。

お風呂の温度は42℃の熱めが好み

―銭湯へのこだわりも押し通さない?

先程のお湯の温度の話に戻るのですが、私の個人的な好みは42℃なんです。熱いお湯で一気に体温を上げるとテンションも上がるので、個人の本音としては夏だからと言って温度を下げことには反対でした……。

でもお子様連れのお客様も増えてきたこともあり、そこで自分の意見だけを押し通しても仕方がないと冷静になり、一歩引いて39℃に。

入ってみたらぬるめのお湯に長く浸かる良さもわかってきたので、自分の意見を押し通さなくて良かったと思います(笑)。

―そんな葛藤があったんですね(笑)。基本的に仕事では自分の熱量を抑えるということですが、どうしても「ここだけは」と熱く取り組んでいるポイントはありますか?

基本中の基本ですが、お風呂掃除に関しては特に熱を入れています。どんなにデザイン性に優れていても銭湯で一番大切なことは絶対に清潔感だと思うので。出社して朝一番の仕事として、自分自身の気合いスイッチも入ります。

あと個人の活動ですが、アクセサリー作りもとても集中力がいる作業。制作中は常に燃えていて、溢れる銭湯愛を注いでいます。

お湯以外の温かさも共有できる「銭湯×α」が、文化継承のキーになる

―今後BathHausではどんなアツい仕掛けを考えていますか?

銭湯と他の文化との賭け合わせを増やしていって、もっと人が集まる場所に進化させていきたいと考えています。

一番はお風呂でライブイベントをやりたいと考えていて。男湯と女湯の壁を抜くことができる構造になっているので、広さは十分。音も響くし、換気扇もあるので、熱気と換気の両立が可能です。「銭湯×音楽」はぜひ実現したいですね。

あとは「銭湯×デザイン」の分野として、オリジナル銭湯グッズやコラボグッズをもっと作りたいなと思っています。

―いまはどんなグッズがあるんですか?

前オーナーのローズさんがプロデュースしたBathHausグッズがあります。 例えばアウトドアバッグブランドの「TAITAI」とコラボして作った、濡れたタオルやドリンクをそのまま入れられる「HYPER LIGHT SENTO BAG」。これ一つで銭湯に行けるので私も重宝しています。

ロゴ入りTシャツも、「10YC」という10年着られる服を作るアパレルブランドとコラボして作りました。他にはステッカーも店頭で販売しています。

今後も、新しいグッズを展開していきたいと思っています。

ーBathHausのような新しい銭湯の形はこれから増えていくのでしょうか?

正直、昔ながらの銭湯はどんどん減っている状況ではあります。

でもそんな中で文化を継承していくためにも、BathHausのようにビールが飲めたり、イベントをしたりといった、「銭湯×α」といった組み合わせがどんどん増えていくのではないでしょうか。

銭湯は本来お湯の温かさを大人数で共有する場所。これからも様々な形で世代を超えた人と人を繋ぐ、みんなが温かくなれる場所になっていったら嬉しいなと思います。

そのためにも、SENTOFOREVERとしての活動も続けていきたい。今年も「 湯沸かし市 」を開催したいと考えています。

取材後、まだ開店時間前にも関わらず「よかったらお風呂でゆっくりしていってくださいね」と、笑顔で案内してくれた林さん。そんな林さんのオープンで温かいお人柄は、銭湯の魅力そのものでした。銭湯の新しい楽しみ方を提案するBathhausで、心も体もぽかぽかになりませんか?

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マガジンど 編集部

あらゆるものの温度について探究していく編集部。温度に対する熱意とともに、あったかいものからつめた〜いものまで、さまざまなものの温度に関する情報を皆さんへお届けします。

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